Nvidiaの株価が再び100ドルを割り込む水準に落ち込んだ。要因は、トランプ前大統領がH20チップの対中輸出禁止を発表したことにある。このチップは、バイデン政権の規制を受けて中国向けに再設計された製品であり、55億ドルの損失が今期計上される見通しである。
中国はNvidiaにとって第4の重要市場であり、Huaweiによる競争激化も脅威となっている。さらにAI市場全体の過熱感が後退しており、同社の投資先であるCoreWeaveのIPOも不調に終わった。これまでの強気姿勢から一転、投資家や証券各社の見通しも慎重に傾いている。現在の株価は割安とも見えるが、逆風が完全に織り込まれたとは言い切れず、押し目買いを急ぐべき段階にはないとの指摘もある。
対中輸出禁止による収益圧迫と市場喪失の構図

Nvidiaが中国市場向けに再設計したH20チップが、トランプ前大統領の新たな輸出禁止方針により供給停止となり、同社は今四半期に55億ドル規模の損失を計上する見通しを示した。中国はNvidiaにとって米国、シンガポール、台湾に次ぐ第4の収益源であり、これまでも米中間の技術摩擦によってデータセンター部門を中心に売上が減少していた。こうした背景を踏まえ、Wedbush Securitiesのダン・アイブス氏は、中国での販売障壁が顕在化したと警鐘を鳴らしている。
現実として、中国ではHuaweiの復活が加速しており、Nvidiaが過去の年次報告書で競合として名指しした同社が再びシェアを奪い始めている。スマートフォン分野ではAppleの地位を脅かす実績もあり、仮にAIチップ分野でも技術的ブレイクスルーを果たすことがあれば、Nvidiaの中国市場における優位性は根本から揺らぐ可能性がある。こうした状況に鑑みれば、今回の輸出制限措置は単なる一時的逆風ではなく、同社の中長期的な事業基盤そのものに深刻な影響を及ぼしかねない構造的問題を孕んでいる。
AI熱の冷却と評価見直しが進む市場環境
AI分野における過熱相場は、企業の収益実態に見合わぬ期待先行型の投資によって一時的に形成されていた可能性が高い。Nvidiaが出資するCoreWeaveのIPOが期待を下回り、現在の株価が公募価格水準に逆戻りした事実は、AI関連銘柄への投資熱が一部で失速している現象の表れと見なせる。MicrosoftのAI支出縮小報道や、Alibabaのジョー・ツァイ会長による「5000億ドル規模の先行投資は過剰である」との認識は、同様の警戒感が市場に浸透し始めている証左といえる。
NvidiaはAIバブルの中心に位置してきたが、決算ごとに「AI」のワードが頻出すること自体が過剰演出であり、収益の裏付けを欠いた期待が株価を吊り上げていた構図があった。今後は企業の投資姿勢においても慎重さが増すことが予測され、GPU価格支配力の低下やアナリストによる格下げなど、評価見直しの動きが強まりつつある。こうした環境下では、Nvidiaに限らずAI関連銘柄全般に対する市場の目は、より選別的かつ現実的にならざるを得ない。
投資家心理と押し目買い戦略の再考
4月に入ってから、DA Davidson、Citi、TD Cowen、HSBCといった著名金融機関が次々にNvidiaの目標株価を引き下げた背景には、楽観的な成長見通しに対する市場の認識変化がある。GPU価格の決定力が限定的であるとの指摘や、輸出規制により収益見通しが曇ってきた現実は、ウォール街での評価の転換点を示唆している。短期的な値下がりを「押し目買い」の好機と捉える向きもあるが、その判断は慎重であるべきだろう。
筆者であるMohit Oberoi自身もNVDAを保有しつつ、現時点での買い増しは見送る方針を明言している。市場が想定する以上に逆風の影響が根深く、まだ株価が織り込めていないリスク要素が残されているとの見方も無視できない。加えて、関税再編や米中対立の先行き不透明感が残る中、Nvidia株への投資は従来以上にマクロ環境への感応度を増しており、過去のような単純な成長期待だけではリスク管理が困難になっている。
Source: Barchart