ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、コロナやモデルを展開するコンステレーション・ブランズ(STZ)株を約12億4000万ドル取得したことが明らかになった。これは2024年Q4の13F報告書で判明したもので、同社がメキシコ製造拠点を多く持つことから、トランプ前大統領の新関税政策発表を受けて株価は急落し、直近で20%超の下落を記録している。

一方で、コンステレーションは直近決算で売上・利益ともに市場予想を上回り、主力製品「モデル・エスペシャル」は依然として全米トップの売上を誇るなど、事業基盤は盤石である。市場の短期的反応とは裏腹に、安定したキャッシュフローと北米におけるブランド力が中長期の収益成長を下支えする可能性がある。

こうした中でバフェットが例外的に選好した点に着目すれば、現在の価格調整はリスクプレミアムではなく、むしろ長期投資家にとって魅力的な機会として映る余地がある。

バークシャーが選んだ唯一の買い増し銘柄としての象徴性

2024年第4四半期の13F報告書により、バークシャー・ハサウェイがコンステレーション・ブランズ(ティッカー:STZ)株を12億4000万ドル分購入していた事実が明るみに出た。これは、ウォーレン・バフェットが近年キャッシュポジションの拡大を優先し、大半の株式を手放していた中での例外的な投資行動である。

バークシャーは2023年から2024年にかけて数百億ドル規模の株式売却を進め、キャッシュ保有額を3340億ドルと過去最高水準に引き上げていた。この流れの中で、バフェットがコンステレーションに対して信認を示した事実は、極めて注目に値する。

背景には、同社が展開するモデル・エスペシャルやコロナといったブランド力の強さがある。特にモデルは2023年にバドライトを抜き、米国で最も売れたビールとなった実績を持つ。また、21億6000万ドルの純売上、2.63ドルの調整後EPS、19億ドルのフリーキャッシュフローといった財務数値は、同社の実力を裏付けるものである。バフェットが述べてきた「競争優位性と財務の健全性」を兼ね備えた典型的な投資対象であり、あえて今この局面での買いを選んだ点に、選別投資の真髄がにじむ。

現在のように、地政学リスクとインフレ環境下で市場が過敏に反応する状況においても、コンステレーションの長期的競争力を評価した判断と見られる。バフェットの投資行動は、単なるポートフォリオの一部ではなく、市場の混乱時に浮かび上がる“核心銘柄”の存在を物語っている。

メキシコ依存型サプライチェーンが生む関税リスクの波紋

コンステレーション・ブランズの株価は2024年に入り、ドナルド・トランプ前大統領が示した対中・対メキシコ関税の再導入姿勢を受け、20%を超える下落を記録している。特に同社はメキシコ国内に大規模なビール製造拠点を持ち、輸送や原材料供給を現地に大きく依存していることから、輸入関税の影響を最も受けやすい業態構造となっている。追加関税が現実となれば、輸入コストの上昇は避けられず、利益率の低下が直ちに業績に跳ね返る構造的リスクが指摘されている。

短期的には市場が関税リスクを織り込み、株価は調整を続ける可能性があるが、重要なのはこれが一過性の懸念か否かという点にある。現時点では具体的な関税率や施行時期は明示されておらず、仮に適用されたとしても交渉による見直しや例外措置の余地も残されている。加えて、同社は国内製造シフトや価格戦略の柔軟性といった対応手段を講じることも考えられ、これらの要因を市場がどう評価するかが今後の株価動向を左右する。

コンステレーションにとっての関税リスクは実在するが、それが致命的な構造不全に直結するものではない。消費者のブランド忠誠度や市場シェアを背景に、一定の価格転嫁も可能と考えられ、物流再編や為替調整による対処の可能性も捨てきれない。問題は「リスクが存在する」という事実以上に、それをどう受け止め、どう織り込むかという市場の解釈にかかっている。

財務指標とブランド優位性が示す長期的価値

コンステレーション・ブランズは、関税リスクや市場動揺にもかかわらず、直近の決算では極めて堅調な実績を残している。2023年通年での売上成長に加え、フリーキャッシュフローは19億ドルという水準を維持し、配当や株主還元の余力も十分に確保されている。特に注目すべきは、主力ブランドである「モデル・エスペシャル」が米国市場においてトップシェアを誇り続けている点であり、バドライトに代わる“新定番”としての地位を不動のものにしている。

こうした財務とブランドの強靭性は、短期の下落に左右されない本質的な企業価値を形成している。アナリスト評価も依然として強気で、現在185ドル前後で取引される株価に対し、平均目標株価は213ドル超。これは市場がコンステレーションの構造的な強さを評価し続けていることを示す。さらに、同社の製品群が高価格帯に位置していることから、価格弾力性が高く、インフレ局面におけるマージン確保にも優れている点が評価材料となる。

今後、仮に関税問題が一時的に終息または想定より軽微にとどまった場合、現在の株価は長期投資におけるエントリーポイントとして再評価される可能性がある。市場の過剰反応による価格形成と、実態としての収益力のギャップが拡大している局面では、冷静な価値判断こそが成果をもたらす。バフェットが語る「恐怖時の貪欲さ」は、まさにこの状況において真価を問われるものとなる。

Source: Barchart.com