Apple Watch Series 10の健康管理機能に対し、新たな不具合が指摘されている。特に、watchOS 11とiOS 18で導入された「トレーニング負荷(Training Load)」機能が、実際の活動量を正確に反映していない可能性があるという。登山に匹敵する高地でのスノーボードなど、相当な身体負荷を伴う運動が記録されていながら、「大幅に下回る」と評価される事例が報告された。
さらに、運動中に心拍数が記録されない現象も確認されており、一部のユーザーに共通して見られる問題である。カスタマイズされたランニングルーチンの不具合とも相まって、信頼性に疑問符が付けられている。Appleが掲げる「より深い健康理解の支援」という理念と現実との乖離が、改めて問われる局面を迎えている。
心拍計測の不具合とカスタム機能の失敗が示すハードウェアとソフトウェアの接点

Apple Watch Series 10は、従来モデルに比べバッテリー持続時間が向上し、日常的な運動監視における利便性が高まったと評価されていた。しかし、運動中に心拍数が正しく記録されない不具合が確認されており、これは一部のユーザーに共通して起こっている事象とされる。さらに、watchOSのカスタマイズ可能なランニングルーチン機能も、動作が安定せず失敗することがあるという報告がある。
心拍計測の不安定さは、運動負荷を定量化する他機能にも影響を及ぼす可能性があるため、軽視できる問題ではない。特に、心拍数を基に構成されるアクティビティ評価指標や健康状態の推定値は、正確な生体データがあってこそ成立するため、収集精度の低下は全体の信頼性を損なう。また、ユーザーが運動の成果を把握し、継続の動機付けとするには、こうした機能の安定動作が前提となる。
Appleは高機能の健康追跡を標榜しているが、今回のような仕様上の脆弱性が、ハードウェアとソフトウェア間の最適化不足を示唆している。運動という極めて動的な環境下においては、微細な身体動作や環境条件が計測精度に影響を及ぼすため、設計段階での十分な実地検証が不可欠である。
トレーニング負荷の誤認識がもたらすユーザー体験の乖離
AppleがwatchOS 11およびiOS 18で導入した「トレーニング負荷(Training Load)」は、直近28日間の運動実績を基に、1週間ごとの活動量を評価する新機能である。しかし、この機能が激しい運動を適切に反映できていない実例が報告された。
たとえば、高地における7日間のスノーボードで約150km滑走したにもかかわらず、アクティビティ評価では「大幅に下回る」と表示され、実態と乖離した結果となった。この評価誤差は、Apple Watchの表示設定や、ワークアウト種別の認識方法に起因していると見られる。
特定のメニュー項目である「All Workouts」がスノーボードのような非定型運動を適切に集計せず、「All Day」表示に切り替えない限り負荷が反映されない構造は、ユーザーにとって分かりにくく、運動の可視化を困難にしている。
活動量の見える化は、フィットネス指標としてのみならず、健康意識の醸成や生活習慣の改善につながる重要な役割を担う。それゆえ、評価の基礎となるアルゴリズムの透明性や網羅性が求められる。特にハイパフォーマンスなライフスタイルを支える層にとっては、こうした精度の甘さがデバイス全体への信頼性を左右する要素となる。
Appleにとっても、機能の高度化と実用性の両立が今後の鍵となる。
Source:BGR