Appleが初めて市場投入を目指す折りたたみ式スマートフォン「iPhone Fold」の詳細が、複数のリーク情報を通じて明らかになりつつある。ミンチー・クオ氏によれば、本機はデュアルレンズのリアカメラと、状態を問わず利用可能なフロントカメラを備えるという。外部スクリーンにはパンチホール型カメラが採用される見込みで、Dynamic Islandの要素を取り入れる可能性も指摘されている。

生体認証はFace IDではなく、Touch IDを側面に搭載する方針とされ、iPadシリーズと同様の設計が採用される見通しだ。また、注目される内部ディスプレイは7.8インチの折り目のない構造で、没入感の高い体験を提供するとされる。開発はすでにFoxconnでのNPIフェーズに入っており、製品化への準備が進行中との報告もある。

デュアルカメラとパンチホール型フロントカメラが示すAppleの設計思想

ミンチー・クオ氏の分析によれば、「iPhone Fold」にはデュアルレンズのリアカメラが搭載され、高水準の写真性能を維持する構成となる見通しである。また、前面カメラは折りたたみ・展開の両形態で使用可能な構造が採用されるとされ、UXにおける連続性が意識された設計である点が注目される。

韓国メディアyeux1122の報道を通じて、外部ディスプレイのカメラがパンチホール型である可能性が高いことも明らかとなった。これはGoogle Pixel FoldやGalaxy Z Foldの流れを踏襲したものとみられる。Appleは、従来のノッチやフリップ式カメラとは異なり、パンチホール内にセンサー機能を集約させることで、画面の一体感と携帯時の利便性の両立を目指していると考えられる。

さらに、Dynamic Islandを応用する設計も検討されているという報道は、単なる模倣ではなく、iPhone特有のUI/UX設計哲学を織り交ぜる意図の現れと捉えられる。Appleがこの分野においても他社との差別化を図る構えを見せている点は、成熟した折りたたみ市場への挑戦を象徴している。

Touch IDの復活が意味する操作性と内部設計のトレードオフ

iPhone FoldではFace IDを排し、側面電源ボタンに統合されたTouch IDを採用する構想が報じられている。これはiPad AirやiPad miniにおいてすでに導入されている方式と一致しており、スペース制約のあるデバイス構造に対して合理的な選択である。

特に、ヒンジ部や折り畳み構造に起因する内部設計の複雑さを考慮すれば、顔認証用の大型センサーやTrueDepthカメラを搭載する余地は限られていると考えられる。Touch IDは、折りたたんだ状態・展開時の双方において本体の向きや使用環境を問わず安定した生体認証を提供できるため、可変的な使用シーンが想定される折りたたみデバイスには適している。

ただし、ユーザー体験としては「次世代の顔認証」を求める一部の期待に応える仕様ではなく、あくまで現実的な折衷案という印象は否めない。Appleがあえてこの判断を下した背景には、初代モデルとしての信頼性確保と製造効率の両立を優先した意図があると見られる。

折り目のない7.8インチディスプレイとNPIフェーズが示す開発の進展

Appleは、展開時に7.8インチとなる内部ディスプレイにおいて、従来の折りたたみスマートフォンが抱えていた「折り目問題」への対応を進めているとされる。これにより、フラットな表示領域と高い没入感を実現し、タブレットに匹敵する視認性と操作性を提供する可能性がある。

5.5インチの外部ディスプレイとの組み合わせにより、用途に応じたインターフェースの最適化が行われるという構成も、iOSの進化を象徴している。また、アナリストのジェフ・プー氏によれば、同デバイスはすでにFoxconnにて新製品導入(NPI)フェーズに進行しており、設計最終化や生産ラインの構築、試作機による検証が行われている段階にある。

このことは、単なる試作段階を超え、量産を視野に入れた具体的な工程に移行していることを示唆している。一方で、ミンチー・クオ氏は2025年第2四半期までに最終仕様が固まらない可能性にも言及しており、設計の最終調整が製品化の鍵を握るといえる。

Source:TechStory