トランプ前大統領による中国への先端半導体輸出禁止措置が、Nvidiaと並びAMDにも深刻な影響を与えている。AMDはこの新たな規制で約8億ドルの損失が発生するとの見通しを明かし、株価は発表当日に6.35%下落、89.24ドルまで値を下げた。

さらに、バンク・オブ・アメリカのアナリストは売上予測の下方修正と共に目標株価を135ドルから110ドルへ引き下げており、市場全体の弱気ムードも重なって先行きへの警戒感が強まっている。一方で、AMDは性能面でNvidiaとの差を縮めており、大規模下落局面でも一定の底堅さを保つとみる声もある。

短期的には80ドル割れのリスクが示唆されているが、70ドル台前半までの急落は市場全体の崩壊がない限り現実性が低いとされており、企業価値の過小評価に着目した中長期の視点が重要となる局面である。

中国向け輸出禁止によるAMDの業績下振れリスクと市場反応

4月16日、トランプ前大統領が打ち出した中国向け先端半導体の輸出禁止措置により、AMDは約8億ドルの損失を見込むと発表した。この影響を受け、同社の株価は当日午前中に6.35%下落し、89.24ドルまで下落した。市場ではNvidiaに比べ注目度は低いが、AMDも等しく大打撃を受けている。バンク・オブ・アメリカのVivek Arya氏は、同社の2025年および2026年の売上高が9〜12%減少するとの見方を示し、目標株価を従来の135ドルから110ドルへ引き下げた。

この見通しの下方修正は、半導体分野全体が地政学リスクに直面していることを浮き彫りにするものであり、米中間の技術摩擦が市場に与える影響は依然として大きい。短期的には、AMD株が80ドルを下回る可能性が示唆されており、輸出規制の余波が続く中、投資家心理の冷え込みが一段と進行することは避けられない。ただし、70ドル台前半への急落は市場全体の急落がない限り限定的とされ、パニック的な売りではなく冷静な見極めが求められる局面にある。

中立評価継続の背景にあるAMDの技術的進展と競争力

バンク・オブ・アメリカが目標株価を引き下げた一方で、投資格付けを「中立」に据え置いた点は注目に値する。これは、AMDが厳しい外部環境にもかかわらず、技術開発の面で確実に成果を挙げていると市場が認識していることを反映している。特に、消費電力や性能といった領域でNvidia製品との差を着実に縮めていることは、今後の収益力維持に対する一定の信頼感を支える根拠となっている。

また、AI市場の急成長に乗り遅れたとされる局面でも、AMDはGPUのみならず、CPUやAPUといった複数分野で競争力のある製品群を持つため、構造的な優位性を持続させる余地がある。企業価値においてはNvidiaとの間に依然として大きな差が存在するが、事業規模では肉薄しており、価格下落局面での相対的耐性は評価材料となる。政策リスクが解消されない限り急騰は期待しづらいものの、中長期的な再評価の可能性は否定できない。

AIブーム後の評価格差と株価の下方余地に対する慎重な見通し

2024年のAIブームで注目を集めたのは主にNvidiaであり、AMDは後塵を拝した形となったが、現在の株価水準にはその評価差が過剰に織り込まれているとの指摘もある。現時点での企業価値と実際の技術的到達度にはギャップが存在しており、これが今後の株価パフォーマンスに修正的影響を及ぼす可能性がある。ただし、短期的には「解放記念日ショック」への初期反応から株価が80ドルを割り込むリスクもあり、過度な期待は禁物である。

投資家の間では、仮に市場全体が大幅に調整される局面が到来した場合でも、AMDが相対的に安定性を示すとの見方も一部にある。これは同社のバリュエーションがNvidiaに比べ割安に放置されている現状と、業績面での一定の予見可能性に起因する。したがって、現状の価格帯では悲観的な見通しが先行しやすいものの、ファンダメンタルズに着目した中長期的なポジショニングには一定の合理性が認められる。

Source: Finbold