NvidiaのH20チップに対する米国の対中輸出禁止措置が発表され、株価は4月16日に急落し、年初来で22%を超える下落となった。Piper Sandlerは目標株価を175ドルから150ドルへ、Bank of Americaも200ドルから160ドルへと引き下げるなど、主要アナリストは軒並み下方修正を行った。各社とも中国依存の影響を重視しつつも、強気姿勢を維持しており、今後の回復余地として最大約53%の上昇可能性を示唆している。
一方で、H20が既に輸出規制に適合するよう設計されていた点を踏まえると、今回の規制措置は想定外であり、リスク評価の前提が覆された可能性がある。市場にはなお一定の回復期待があるが、長期的視野に立った目標株価は今後さらに保守的になると考えるのが現実的であろう。
H20チップ輸出禁止による業績下振れ懸念と55億ドルの影響評価

NvidiaのH20チップが米政府の新たな輸出規制の対象となり、対中国市場での販売が突然封じられた。これにより、2024年次の業績に対し55億ドル規模の減損が生じる可能性が初期試算で示され、同社の収益構造に大きな影を落としている。4月16日には株価が104.69ドルまで急落し、年初来で22.04%の下落となった。これらの動きは、投資家心理を大きく冷やし、これまで高評価を維持していたテック主力銘柄としての安定性に疑問符を投げかけている。
ただし、H20チップはそもそも輸出管理に準拠した設計とされており、この措置はPiper Sandlerが述べるように市場関係者にとって意外性が大きかった。つまり、既存リスクの延長ではなく、新たな地政学的規制リスクとして評価し直す必要が生じたといえる。加えて、中国市場は同社売上の14%前後を構成しており、短期的な売上減にとどまらず、事業戦略全体の見直しを迫る要因となる可能性もある。現時点では数値化可能な損失は55億ドルとされるが、影響は限定的と断じるには早計である。
各社アナリストの株価修正と評価維持の背景
H20の輸出禁止に即応するかたちで、Piper Sandler、Raymond James、Bank of Americaなど大手金融機関が相次いでNvidia株の目標株価を引き下げた。具体的には、Piper Sandlerは175ドルから150ドル、Raymond Jamesは170ドルから150ドル、Bank of Americaは200ドルから160ドルへと見直しが行われた。ただし、いずれの機関も評価は「オーバーウェイト」や「買い」を維持しており、急落の中にも回復への期待を織り込んでいる点が注目に値する。
Raymond Jamesの分析では、今回の規制は完全な予想外ではないとし、既にリスクの一部は市場に織り込まれていたとされている。また、Bank of Americaは2つの想定シナリオを提示しており、中程度の関税影響では売上が最大6%、EPSが13%減少する見込みを示す一方、深刻化した場合にはそれぞれ12%、さらにはそれ以上の減少があり得ると指摘している。これは評価の下方修正に一定の合理性を持たせつつも、長期的な収益回復シナリオを完全には否定しない姿勢を示している。
一方で、現行株価水準と見直し後の目標株価との乖離はなお大きく、Piper SandlerとRaymond Jamesで43%、BofAでは最大53%の上昇余地があるとされている。短期的な調整局面とは裏腹に、中長期の投資魅力は引き続き維持されるという市場認識が根底にあることがうかがえる。よって、今回の下方修正はあくまで外的ショックに対する限定的な調整であり、悲観一色には傾いていない構図が浮かび上がる。
Source: Finbold