米著名投資家ジム・クレイマーが2025年4月16日、かつて絶賛していたNvidia(NVDA)に対し、「ミーム株に成り下がった」とSNSで批判した。この発言は、米政府によるH20チップの対中輸出制限の発表直後に行われ、同社株は前日比6.01%の急落を記録し、年初来では21.48%の下落となっている。

クレイマーは短期的な過熱感とオプション取引による価格操作を警戒し、FOMOを誘発する過剰な市場参加者の行動に強い警鐘を鳴らしている。一方で、長期的な見通しには依然強気姿勢を維持しており、今回の発言は短期的ボラティリティへの懸念に基づくものであるとの見方が有力である。

ジム・クレイマーが「ミーム株」認定に至ったNvidiaの市場環境

2025年4月16日、ジム・クレイマーは自身のSNS上で、Nvidia(NASDAQ: NVDA)を「ミーム株」と断じる発言を行い、市場関係者の間で波紋を広げた。この背景には、同社の株価が短期間に過熱したことに対する懸念がある。直前の4月15日にはNVDA株が1.35%上昇し112.20ドルをつけたが、翌16日にはホワイトハウスがH20チップの中国向け輸出を制限すると発表し、市場は急速に反応。同日の終値は105.45ドルと前日比6.01%の下落を記録し、年初来では21.48%のマイナスに沈んだ。

クレイマーはこの急変動を「ゼロデイオプションによる価格操作の可能性」によるものと見ており、市場の短期的な不健全さを強調した。彼は近年のNvidiaを支えていたプレマーケットの強気買いを「FOMO(取り残され不安)」に基づく過剰行動と指摘し、空売り筋と強気派の双方がタイミングを誤った取引に巻き込まれていると分析している。

この発言は、彼が一貫してNvidiaの長期的成長を評価してきたスタンスと矛盾するものではなく、株価に影響を及ぼす外的要因への短期的な警鐘と受け止められる。現時点では同社の業績見通し全体を否定するものではなく、むしろ不安定な需給環境に対する是正的発言と評価するのが妥当である。

 過熱相場への批判と今後のNvidia評価の分岐点

クレイマーは『マッド・マネー』を通じて、投資家の感情過多が市場価格に過剰な影響を及ぼしていると再三にわたり警告してきた。今回Nvidiaが標的となったのは、ゼロデイオプション取引やSNS上の情報に煽られた買いが連鎖的に株価を動かし、合理性の薄い急騰と急落を繰り返していることに対する指摘である。とりわけ2025年5月28日に控える同社決算で、輸出制限による55億ドル規模の減収リスクが現実となる場合、現状の株価水準が正当化されるかどうかが試される局面を迎える。

また、クレイマーは短期的な株価変動に対する懸念を示す一方で、長期的にはNvidiaの技術革新力とAI市場における競争優位性を依然として高く評価している姿勢を崩していない。実際、これまで同氏はNVDAを有望銘柄として推奨し続けており、今回の発言も「警戒」と「否定」を明確に切り分けたものと解釈できる。

今後の焦点は、政府規制による影響が業績にどの程度波及するかに加え、オプション市場の過熱がどのように抑制されるかにある。投資家にとっては、クレイマーの発言を短期的な市場冷却シグナルと捉えつつ、ファンダメンタルズの変化を慎重に見極める必要がある。長期視点を失わずに、ボラティリティの本質を見極める力量が試される局面である。

Source: Finbold