2024年11月の大統領選で敗北したカマラ・ハリス元副大統領の投資ポートフォリオは、その後の5か月間で厳しい状況に直面している。iShares MSCI EAFE ETF(IEFA)のみが2.49%の上昇を見せた一方、Vanguard Small-Cap Value Index Fund(VBR)は13.07%の下落、Dodge & Cox Stock Fund(DODGX)は10.26%の下落と、大半がマイナスを記録した。Vanguard Total Stock Market Index Fund(VTSAX)やUSIGも軟調で、全体では5銘柄中4銘柄が損失を計上している。

この成績は、選挙敗北の影響に限定されず、国内市場全体に影を落とす政策不透明感や貿易関税をめぐる世界的な警戒感、そして小型企業への信用不安が複合的に作用した結果と考えられる。中でも小型株やバリュー株の弱含みは、より広範な経済の脆弱性と投資家心理の不安定さを映し出している。

主要インデックスファンドの明暗 IEFAの健闘とVTSAXの不振が示す市場構造の分岐

2024年11月以降のカマラ・ハリス元副大統領のポートフォリオにおいて、IEFA(iShares MSCI EAFE ETF)は2.49%の上昇を記録した唯一の銘柄であった。このETFは、米国およびカナダを除く先進国の株式市場に広く分散投資するものであり、欧州やアジア太平洋地域の市場が米国市場と異なる動きを示したことが要因とされる。特に為替の安定と比較的落ち着いたインフレ環境が、国際株式市場への資金回帰を促したと見られる。

一方で、Vanguard Total Stock Market Index Fund(VTSAX)は、米国市場全体の代表格でありながら、5か月で4.19%の下落を記録した。これは、選挙後の政策不透明感や利上げ動向を含むマクロ経済的な不安が国内市場に重くのしかかっていることを反映している。S&P500やNASDAQの乱高下が象徴するように、大型株とテック株の脆弱性が特に目立った期間であった。

こうした結果から、グローバル分散がある程度のリスク回避に寄与したことは確かだが、同時に米国市場の構造的な不安定性も浮き彫りになった。金融政策、地政学、貿易政策の変化がポートフォリオ全体に及ぼす影響は今後さらに強まる可能性がある。米国株の一極集中から脱却したIEFAのような運用姿勢が、今後のリスク分散戦略の手本となり得る。

バリュー株への逆風 DODGXとVBRの急落が示す投資家心理の変化

ハリス氏のポートフォリオにおけるDodge & Cox Stock Fund(DODGX)とVanguard Small-Cap Value Index Fund(VBR)は、それぞれ10.26%および13.07%の大幅な下落に見舞われた。DODGXは大型バリュー株、VBRは小型バリュー株に特化しており、いずれも経済成長に対する期待が後退した場面では売られやすい性質を持つ。特に小型企業は、景気の減速や資金調達環境の悪化によって収益構造が脆弱になりやすい点がリスクとして意識されやすい。

この下落の背景には、利上げによる資金コストの上昇や、消費の鈍化といったマクロ経済の要素があるほか、投資家のリスク許容度の後退が大きく影響している。さらに、バリュー株全体に対する見直しの動きも強まっており、成長株への資金集中が続く限り、このセグメントの低迷は続く恐れがある。

結果として、バリュー株への投資がディフェンシブ戦略として機能しづらい局面に入っていることが浮き彫りになった。DODGXとVBRの動向は、単なるパフォーマンスの問題にとどまらず、現在の市場心理がいかに防御的かつ流動性重視であるかを示す象徴的な事例である。

米国投資適格社債ETFの下落とその相対的安定性が映す市場の期待と不安

iShares Broad USD Investment Grade Corporate Bond ETF(USIG)は、2024年11月から2025年4月にかけて1.96%の下落にとどまっており、ハリス氏のポートフォリオの中では比較的安定的な推移を見せた。USIGはブルームバーグ米国投資適格社債インデックスに連動し、高格付けの社債を中心に構成されているため、株式市場と比較してボラティリティが低いという特徴を持つ。

しかし、この小幅な下落は、社債市場にも金利上昇や信用スプレッド拡大への懸念が及んでいることを示唆する。特に、FRBの政策金利の上昇が続く中では、固定利付債の価値が低下しやすく、投資適格債であっても価格下落は避けられない。また、企業業績の先行きに対する不安も、投資家に慎重な姿勢を取らせている。

とはいえ、USIGの動きは市場が極端なリスク回避一辺倒ではないことを示す材料ともなり得る。株式市場が混乱するなかで、一定の需要が残る債券市場は、依然として資産分散の一手段として有効である可能性がある。ただし、債券市場も金利変動に敏感である以上、慎重な運用判断が求められる。

Source: Finbold