2025年4月15日、Nvidia株は通常取引で1.35%上昇した直後、バイデン政権による中国向けH20チップ輸出禁止の発表を受け、時間外取引で5.15%下落し106.42ドルを記録した。トランプ前大統領による米国製AIスーパーコンピュータ支持発言が一時的な上昇材料となったが、制裁発動による55億ドルの減損見通しが市場心理を圧迫した。
この規制強化はNvidiaのみならず、AMDやASMLなど世界的な半導体企業の株価にも波及し、プレマーケットではAMDが6.31%、ASMLが4.37%の下落となった。年初来で依然18.88%のマイナス圏にあるNvidia株は、反発の可能性を残す一方で、米中間の地政学的リスクの高まりから先行きは依然として流動的である。
トランプ発言とホワイトハウス規制が生んだ急騰と急落の同日劇

2025年4月15日のNvidia株は、1日のうちに対照的な二つの政治的要素に翻弄された。まず、トランプ前大統領が米国内でのAIスーパーコンピュータ生産を称賛し、Nvidiaの国家的意義を強調したことで、同社株は通常取引で1.35%上昇し、112.20ドルの終値を記録した。
しかし、同日夜にバイデン政権が中国向けH20チップの輸出禁止を正式に発表すると、時間外取引で同株は5.15%下落し、106.42ドルまで急落した。これにより、1日で全く異なる評価が市場で交錯することとなった。
この急転直下の動きは、Nvidiaが米中間の経済安全保障における象徴的存在であることを改めて印象づけた。特に、輸出制限が引き金となる55億ドルの減損処理見通しは、次回の決算発表を控えた市場に大きな懸念を与えている。さらに、株価変動の直接的な要因となった両政権の発信のタイミングと内容が、いかに投資家心理を動かし得るかを示す象徴的な事例といえる。今後の展開次第では、このような政治主導の市場変動が常態化する可能性も排除できない。
世界半導体市場全体に広がる規制の波紋と株価下落の連鎖
Nvidiaに端を発した輸出規制の影響は、同業他社や関連サプライチェーンに瞬時に波及した。AMDは同様に中国向け高性能チップの出荷を制限されており、4月16日のプレマーケットでは前日比6.31%安の89.28ドルで取引されている。また、オランダの露光装置メーカーASMLも時間外で4.37%下落し、653.31ドルまで下落した。こうした株価の連鎖的な下落は、単なる1企業の問題にとどまらず、先端半導体全体が地政学リスクに直面していることを浮き彫りにしている。
特にASMLの下落は、米国以外の主要技術供給国にも影響が及ぶ構図を明示している。米国の対中政策が強化されることで、中国依存度の高い企業は戦略の見直しを迫られ、株価もその不確実性を織り込み始めたと考えられる。こうした状況は、Nvidia単独の問題ではなく、グローバルなサプライチェーン全体に波及し得るものであり、今後の各国政策動向が市場ボラティリティの新たな要因として浮上していく可能性がある。
株価反発の兆しと米中対話の余地に残る慎重な楽観
4月16日には先物市場が上昇し、Nvidia株の反発可能性も取り沙汰されている。その背景には、中国政府が米国との対話の余地を残しているとの報道がある。中国側が「敬意ある対応」を条件に交渉継続に前向きな姿勢を示したとされており、一部投資家の間では市場環境の軟化に対する期待が芽生えている。しかし、この反発が一過性にとどまるか、持続的回復への契機となるかは依然として見通せない。
現実には、Nvidiaのような高性能半導体は、戦略物資としての位置づけが強く、単なる民間ビジネスを超えた安全保障上の要素が常につきまとう。また、米中関係自体が「第二の冷戦」とも形容される構造的対立にあるため、緊張緩和の兆候が見られたとしても、それが株価の持続的回復につながる保証はない。現在の市場には、期待と警戒が入り交じる複雑な心理が反映されており、今後の動向を読み解くには、一層の慎重さが求められる。
Source: Finbold