4月10日にS&P 500で発生した「デスクロス」は、50日移動平均線が200日線を下回る弱気サインとして注目されている。背景には、トランプ政権による60カ国への関税発表に起因する市場の動揺がある。2月の最高値6,129から4月には4,982へと12%を超える下落を記録し、4月16日時点でも年初来で8.04%のマイナス圏にある。

一方で、著名アナリストのTradingShot氏は今回の下落を「フラッシュクラッシュ」と捉え、2020年のCOVIDショック後のように短期的な調整と見る姿勢を示す。実際、COVID時のデスクロス後には市場は急速に回復した過去があり、今回も9月までに6,300への上昇余地があるとの見方もある。

ただし、大手金融機関は2025年のS&P予測を平均16.4%下方修正しており、ホワイトハウスの外交政策の不透明さもリスク要因として残る。デスクロスを巡る相場の行方は、今後のマクロ政策次第で大きく変動する可能性がある。

S&P 500に現れたデスクロスと急落要因の構造的背景

4月10日にS&P 500に出現した「デスクロス」は、50日移動平均線が200日線を下回る形で出現し、一般的には相場の下降トレンド入りを示唆するテクニカル指標である。今回のデスクロスは、2月18日に史上最高値6,129を記録して以降、米国の外交政策に起因するマクロ経済的な不確実性に市場が反応した結果とされる。とりわけ4月2日に発表された60カ国以上への大規模な関税措置が、投資家心理に直接的な悪影響を与えた。この関税政策による警戒感の広がりは、S&P 500を5,670から一時4,982まで急落させる契機となった。

この下落は12.13%に及び、年初来ベースでも4月16日時点で指数は8.04%のマイナスを記録している。ただし直後に関税の一部一時停止が発表されたため、指数は5,396まで反発している。こうした背景から、今回の下落は持続的な弱気トレンドではなく、政策起因の一過性の反応であるとの解釈も生じている。いずれにせよ、米国の対外経済政策と株式市場の相関性がより一層強まっていることが今回の急落から浮き彫りとなった。

TradingShotによる比較分析とテクニカル指標の示唆

著名テクニカルアナリストのTradingShot氏は、4月15日のTradingViewにおいて今回のデスクロスの性質を2020年のCOVIDショックと類似するものと分析した。同氏によれば、2022年5月のインフレ修正時のデスクロスは明確な弱気相場の兆候であったのに対し、今回の現象は市場のパニック売り、いわゆる「フラッシュクラッシュ」に過ぎず、中期的な回復可能性が示唆されるとしている。実際、2020年にはデスクロスが底値からわずか4日後に発生し、その後のS&P 500は大幅に上昇した過去がある。

今回の下落局面でも、S&P 500はフィボナッチリトレースメントの1.1水準に向けた反発の途中にあるとされ、これが2020年のパターンと重なるならば、9月中旬には6,300に達する可能性がある。ただし、このテクニカルな予測はあくまで相場の一局面における参考値であり、過去との類似性だけをもって将来を断定することはできない点に留意が必要である。相場の動向を読み解くうえで、テクニカルとマクロ要因の両視点からの評価が求められる局面にある。

大手機関の予測修正と政策不確実性の影響範囲

ウォール街の主要金融機関は、2025年のS&P 500の年末予測を平均して16.4%引き下げたことが明らかとなっている。これは、関税政策に代表されるホワイトハウスの外交方針が依然として不透明であり、市場が今後も激しい変動に晒されるリスクを内包していると判断されているためである。関税一時停止という短期的な緩和措置にもかかわらず、政策の一貫性の欠如が中長期的な投資見通しを困難にしている。

加えて、外交リスクや地政学的要因が指数全体に与える影響がかつてなく顕在化していることから、従来の企業業績やマクロ経済指標のみで相場を読み解くことは困難となっている。今回のような政策起因の急変動は、今後も予期せぬ形で発生する可能性があるため、市場参加者にとっては柔軟性とリスク管理がこれまで以上に重要となる局面である。短期的な反発の兆候が見られる一方で、下方修正された年末予測が示す通り、先行きには依然慎重な姿勢が求められる。

Source:Finbold