トランプ前大統領率いる米政権は、中国の先端AI研究機関であるDeepSeekに対する包括的な規制措置を検討している。報道によれば、NvidiaのAIチップを同社に販売することの禁止や、米国居住者によるDeepSeek製AIサービスへのアクセス制限が視野に入っており、米中間のAI技術競争の緊張が新たな段階に突入しつつある。

特にDeepSeekは、近月に急速な台頭を遂げ、シリコンバレー内で価格競争を引き起こしたほか、知的財産の不正使用疑惑も浮上している。OpenAIは、DeepSeekが独自モデルを模倣・蒸留したとして批判を強めており、安全保障上の懸念が今後の規制判断に大きく影響するとみられる。

トランプ政権が検討するDeepSeek制裁措置の具体的内容と背景

トランプ政権は、中国のAI企業DeepSeekに対する制裁強化の一環として、Nvidia製AIチップの対中輸出停止および米国内でのDeepSeek製AIサービスの利用禁止を検討している。これは、2025年4月16日にニューヨーク・タイムズが報じた内容に基づくものであり、既存のバイデン政権下での輸出規制をさらに強化する動きと位置づけられる。規制の狙いは、米国の半導体技術が中国の軍事・技術的優位に転用されるリスクを封じることである。

背景には、DeepSeekがここ数か月で米国内外の開発者に急速に支持を広げ、AI市場における競争力を高めている現状がある。その競争力は価格面だけにとどまらず、処理性能やモデル品質の面でも評価が高まっており、米国のAIスタートアップや大手企業にとって脅威と受け取られている。また、同社が知的財産を不正に流用したとの指摘もあり、OpenAIは自身のモデルがDeepSeekに蒸留(distill)され、利用規約に違反したと批判している。

米国当局が今後どこまで踏み込むかは未定であるが、現行の規制強化に加えて、民間との技術連携の切断も視野にある。今後の政権判断次第で、AI技術の国際的な分断がさらに進む可能性があるが、それは必ずしも技術革新を促す方向には機能しないという慎重な声も市場からは上がっている。

DeepSeekの急成長と知的財産に関する疑念が引き起こす懸念

DeepSeekは、2025年初頭から米国を中心とするグローバルなAI市場で急速にプレゼンスを拡大している。特に注目されたのは、同社が提供する大規模言語モデルの価格設定が既存の米国勢を大きく下回り、スタートアップや個人開発者を中心に急速に支持を集めた点である。加えて、モデルの応答精度やカスタマイズ性も評価され、OpenAIやAnthropicなど米国企業の価格戦略に影響を与える存在となった。

しかし、その躍進の背後には、知的財産権の侵害という深刻な問題が潜んでいる可能性がある。OpenAIは、DeepSeekが自身の商用モデルを無断で蒸留し、内容を複製・再構築したと主張しており、これは利用規約違反にとどまらず、国際的な技術倫理や契約法の観点でも問題となる。こうした疑義は、同社が提供する技術の信頼性だけでなく、グローバルな技術競争の公正性にも影を落としつつある。

現時点で確定的な法的判断は示されていないが、トランプ政権が規制強化を進める上でこの問題を根拠とする可能性は否定できない。技術の優劣を競う市場において、ルールに基づいた信頼が損なわれれば、長期的には市場全体の成長にも負の影響を及ぼすことが懸念される。米中両国にとって、国家戦略と技術倫理のバランスが問われる局面が今まさに到来している。

Source:TechCrunch