Huaweiが次世代AIチップ「Ascend 910C」に、TSMCの7nmプロセスチップを引き続き採用している可能性が浮上した。米国による制裁下にもかかわらず、同社は取引停止処分を受けた中国企業Sophgoを経由して、約5億ドル相当のTSMC製チップを確保したと推定されている。
またHuaweiは設計を中国国内で完結させつつも、TSMC製ウェハーやSamsung製HBM、日本・オランダ・米国製の製造装置など、製造段階では依然として外国技術に大きく依存している。SMIC製の国内7nmプロセスもある中で、Huaweiはその性能に満足していないと見られる。
TSMC製チップを経由調達か Huaweiが活用したSophgoの存在

HuaweiがTSMC製の7nmチップを入手する手段として、中国企業Sophgoの存在が浮上している。かつてTSMCとの取引を禁じられた同社を経由することで、Huaweiは約5億ドル相当の半導体を確保したとされる。この取引は、直接的な違反を避けつつも米国の制裁を迂回する巧妙な方法として注目されており、HuaweiのAI開発戦略における抜け道として機能している可能性がある。
背景には、かつてTSMCがHuaweiのAscend 910Bへの供給に関与したことで10億ドルの罰金を科され、その後すべての中国企業との取引を停止した経緯がある。にもかかわらず、Huaweiはその後も他社経由でTSMC製品を確保し続けているとされており、米国の制裁が現実にはどの程度有効に機能しているのかに疑問が残る。
仮にこのような抜け道が恒常化すれば、今後のAI半導体市場において制裁の実効性を左右する大きな要因となり得る。制度の枠外で調達が可能であるならば、形式的な規制だけでは最新技術の流通を完全に抑えることは難しい。
Ascend 910Cが示す中国製造の限界と現実
Ascend 910Cはその設計こそ中国国内で完結しているものの、実際の製造工程ではTSMCの7nmプロセス、SamsungのHBM、さらにオランダ・米国・日本製の製造装置など、広範な海外依存に支えられている。国内ファウンドリであるSMICも同じく7nmプロセスを提供しているが、Huaweiはこれを「未熟」と判断し、採用を避けているとされる。
この選択は、技術の成熟度や信頼性が製造プロセスにおいて重要な判断基準であることを示している。たとえ自国内でファブを持っていても、性能や歩留まりの面で劣れば採用には至らない。これは、AIチップのような高性能を要求される用途では特に顕著な傾向である。
今後、国内技術の育成が進まなければ、ハードウェアの根幹に関わる部分での海外依存は継続するだろう。仮に政治的には自立を目指しても、技術的成熟には時間がかかるため、当面は海外資源との関係を断ち切ることは困難と見られる。
米国の制裁政策とテクノロジー流通の現実的ギャップ
米国が推し進める対中制裁政策は、形式的にはファウンドリや半導体製造装置の提供を禁止する厳格なものである。しかし現実にはHuaweiを含む大手中国企業がTSMCや他の外国メーカーの技術を何らかの形で調達できており、制度と実態の間に大きなズレが生じている。
今回の事例では、輸出規制が実施される前にHuaweiがチップを備蓄していた可能性も指摘されており、これが現在の供給に役立っている可能性がある。さらに、第三者企業を経由することで規制の網をかいくぐる動きが存在するという指摘もあり、制度の網目を突いた調達の可能性が高まっている。
こうした構図が放置されれば、形式上の規制があっても実効性が伴わず、技術流通を完全に封じることは難しい。制裁が抜け道の存在によって形骸化するリスクを踏まえた、より現実的かつ包括的な対策が求められている。
Source:Wccftech