ウォーレン・バフェットが2024年にApple株を6億1500万株以上売却していた背景には、キャピタルゲイン課税の増税懸念があったとされる。ハリス候補の税制方針を受けた予防的対応と見る向きもあるが、トランプ再選によりそのリスクは一掃された。2025年4月、Apple株はトランプ政権の関税発表を受けて急落し、バフェットにとっては再参入の好機となった可能性がある。

このような政治と市場の変化は、バフェットの投資判断を再びApple株へと傾けさせる要因となり得るが、実際に買い増しが行われたかは今後の開示に委ねられる。税負担の軽減、割安な株価、そして長期的成長性が交差する現在の状況は、バフェット流投資の原則に合致し得るが、短期的な政策リスクが依然として投資判断の不確実性を残している。

Apple株売却の背景にある税制対策と投資家心理への影響

ウォーレン・バフェットは2024年、4四半期連続でApple株の一部を売却し、合計6億1500万株以上を手放した。この動きに対し、一部ではAppleに対する信頼が揺らいだとの見方が広がったが、真の理由は税制上の対応である可能性が高い。具体的には、キャピタルゲイン課税の引き上げを公約に掲げたカマラ・ハリス氏の動向に備えた行動とされる。

バークシャー・ハサウェイが長期保有するApple株には多額の含み益が存在しており、増税が実現すれば多大な納税義務が生じることとなる。バフェットは株主価値の最大化を最優先する姿勢を貫いており、税負担の軽減を図るための段階的売却は合理的判断といえる。

一方で、売却はAppleのビジネス見通しへの懸念からではないという点も重要である。Appleは依然として年間900億ドル以上の利益を計上し、サービス部門の成長も堅調である。バフェットの信条に基づけば、ファンダメンタルズに揺るぎがない限り、短期的な外的要因による調整は投資判断を左右する要因とはならない。このような売却の背景を見誤れば、投資家はApple株の本質的価値を見逃すことになりかねない。短期の行動を過度に重視する市場心理の傾向は、投資判断における誤解を生みやすい構造を持つ。

トランプ再選と市場急落がもたらす買い場の可能性

2025年4月8日、Appleの株価は一時172.42ドルに下落し、52週安値の164.08ドルに迫る水準を記録した。この背景には、ドナルド・トランプ大統領が宣言した「解放の日」とそれに伴う関税政策の影響がある。

Appleのグローバルサプライチェーンは関税に極めて敏感であり、追加関税の導入がコスト上昇と利益圧迫につながるとの市場の懸念が売りを誘発したとされる。ただし、この急落がAppleの業績に即座に壊滅的な打撃を与えるとは限らない。バフェットが注視するのは、むしろそうした市場の過剰反応が生み出す割安な価格帯である。

さらに、2024年の選挙以降、Apple株の売却を一切行っていない点も注目に値する。これはハリス氏による増税リスクの消滅と時期を同じくしており、売却停止は戦略的な判断であった可能性がある。Appleの株価下落と税制安定という2つの要因が重なった今、バフェットがApple株の再取得を進めているとすれば、それは彼の長年の投資哲学に完全に一致する。短期的な関税リスクは依然として残るが、バフェットにとってはその影響は一時的と映るだろう。市場の動揺とは裏腹に、投資妙味はむしろ高まっているといえる。

Source:The Motley Fool