ドナルド・トランプ前大統領が自動車関税の一時的免除を検討する中、テスラ株(TSLA)は52週高値から約50%下落し、投資家の間で売買判断が割れている。トランプ氏が推進する政策変更案は、関税による製造コスト増と価格上昇を一部緩和し得るが、業界アナリストは抜本的な構造変化にはつながらないと指摘する。
同時に、テスラは2025年第1四半期に13%の納車減少を記録し、欧州市場の低迷やブランド価値の毀損も響いている。現在、アナリスト41名の評価は「強い買い」から「強い売り」まで分散し、目標株価は平均で現在値の約1.5倍とされているが、成長鈍化と地政学リスクが複雑に絡み合い、先行きには不透明感が残る。
トランプ氏の関税免除方針がテスラ株に与える直接的影響とその限界

2024年4月に発効した完成車への25%の対中関税、5月に予定される自動車部品への関税に対し、トランプ前大統領が一時的な免除措置を検討している。これには、米国産素材を含む部品の適用除外やUSMCA認定部品への特例が含まれ、グローバルサプライチェーンへの負荷軽減を狙っている。しかし、複雑化した供給網を持つ自動車メーカーにとって、短期的措置では構造的な打開にはつながらず、実質的な効果は限定的とみられる。
テスラを含むEVメーカーにとって、部品調達や製造コストの上昇は価格転嫁に直結し、ディーラーでの販売価格が数千ドル規模で上昇する可能性が指摘されている。経済アナリストは、仮に免除措置が講じられても、需給の不均衡や製造ラインの再構成には時間を要するため、業界全体の利益率改善には貢献しにくいと警鐘を鳴らす。ウォール街では既に一定程度の影響を織り込んでいるが、免除の有無によって2025年後半以降の業績予想に下方修正圧力がかかる懸念もある。
一方で、今回の措置は2025年選挙に向けた経済的譲歩とも受け取られており、テスラにとっては短期的な材料視も可能である。ただし、それが継続的な株価上昇のトリガーとなるかは、関税以外の経営課題を踏まえた総合的評価が必要となる。
テスラの納車減とブランド毀損が投資家の判断を分断させる構図
2025年第1四半期におけるテスラの納車台数は336,681台となり、前年同期比で13%の減少、アナリスト予想の360,000〜370,000台を大きく下回る結果となった。生産台数は362,615台にとどまり、販売と生産のギャップが拡大している。主力モデルであるModel 3およびModel Yの販売鈍化は、欧州市場での需要減速やブランド価値の低下が一因とされており、収益力に直結する警戒材料となっている。
Wedbush証券のダン・アイヴス氏はこの結果を「すべての指標での大失敗」「分岐点の到来」と位置づけ、今後の経営戦略が明暗を分ける段階に入ったと指摘した。背景には、価格競争の激化や中国EVメーカーの台頭があり、イーロン・マスクCEOの政治的関与が国際展開に影を落としている可能性も否定できない。
また、過去5年で年平均31.8%の成長を遂げた売上高が、2024年から2029年には19.9%へと成長減速する見通しであり、成長株としての評価に見直しが迫られている。アナリスト41名のうち16名が「強い買い」、10名が「強い売り」とするなど評価が分かれる中、株価のボラティリティが一層高まるリスクがある。今後の反発には、新技術の実装や信頼回復が不可欠といえる。
Source:Barchart.com