AMDが開発中とされる新型モバイル向けプロセッサ「Ryzen Z2 A」は、Steam Deckに搭載されたVan Gogh APUを基にした設計であるとリークされた。Zen 2アーキテクチャとRDNA 2 GPUを引き継ぐ構成と見られ、携帯型ゲーミングPC市場における廉価帯の需要を狙った戦略と考えられる。

既に正式発表済みの上位モデル「Ryzen Z2 Extreme」が未だ市場投入されていない中、Z2 Aはより導入しやすい選択肢として、LenovoのLegion Go Sなど複数の新興デバイスへの採用も想定されている。ValveのSteamOSとの親和性も高く、低消費電力での高効率動作が期待される。

ただし、AMDはこのリークについて公式な発表を行っておらず、実際の製品化についても不透明な部分が残る。市場の動向やOEMの採用意欲によっては、同社の携帯型ゲーミング戦略が大きく左右される可能性がある。

Steam Deck由来のVan Gogh APUを採用か Ryzen Z2 Aの設計思想

Ryzen Z2 Aは、Steam Deckに搭載されたVan Gogh APUを基礎とする可能性がある。Van GoghはZen 2アーキテクチャを採用し、RDNA 2ベースのGPUを8基のCU構成で統合していた。今回のリークでは、未発表の「Z2 A」がこの構成と一致することが示唆されており、設計資産の再利用によってコスト面と互換性の両立を狙った開発方針とみられる。

Steam Deckの成功により、このAPUの実用性と性能バランスが証明されており、それを引き継ぐZ2 Aも一定の期待を集める。特にSteamOSとの相性の良さは、Linuxベースの最適化と軽量化の恩恵を携帯型デバイスにもたらす要素となる。AMDがこの構成を再利用する意義は、技術革新よりも市場ニーズに即した現実的対応にあると考えられる。

一方で、Van Gogh世代は既に旧世代に分類される設計であり、性能面では現行APUに劣る点も否定できない。そのため、このZ2 Aがハイエンドを志向する製品ではなく、コスト重視の廉価帯をターゲットとした構成となる可能性が高い。AMDの狙いは、性能よりも市場カバレッジの拡大にあるといえる。

Ryzen Z2 Extreme未登場の中で問われるZ2 Aの役割

AMDは2025年1月に上位モデル「Ryzen Z2 Extreme」を発表したが、これを搭載する製品は未だ登場していない。こうした状況下でZ2 Aの存在がリークされたことは、同社のZシリーズ戦略が一枚岩ではないことを示唆している。Extremeモデルの市場展開が遅延している背景には、発熱や消費電力、デバイス側の設計制約など複合的な要因がある可能性がある。

Z2 Aがこれらの課題を回避するための廉価かつ安定的な選択肢であるならば、AMDはまず下位モデルから市場投入を試みる段階にあるとも解釈できる。特にLenovoが開発中とされるLegion Go Sなどに採用されれば、一定の需要と動作実績を得ることが可能となる。AMDはまずこの層を押さえた上で、上位モデルの投入タイミングを見極めていると考えるのが妥当である。

また、SteamOS対応が視野に入っていることから、Z2 AはWindows以外のOSとの親和性を意識した設計とも受け取れる。これにより、Valve系デバイス以外でもSteam Deckのような体験を提供できる製品群の裾野が拡大する可能性が生まれる。

携帯型ゲーミング市場におけるAMDの新たな布石

携帯型ゲーミングPC市場は、Steam Deckの成功を契機に成長を続けている。近年はASUS ROG AllyやLenovo Legion Goなど多様な選択肢が登場しており、AMDはこうしたデバイスの多くにAPUを提供する立場にある。Z2 Aの投入が事実であれば、同社はこの分野において、価格帯ごとの明確なラインナップ構築を進めていることになる。

低消費電力・中性能のZ2 Aをベースとすることで、メーカー側はデバイスの薄型化や冷却性の確保、価格競争力の維持が可能になる。また、Steam Deckと同系統の設計資産を活用することで、ドライバ互換性やOS最適化の工数も軽減される利点がある。

ただし、Z2 Aが実際にどの程度の性能水準で、どの価格帯に位置づけられるかは不明であり、競合との比較優位性は現段階では判断できない。市場に登場する製品の仕様と価格設定が、AMDの戦略の成否を左右する分岐点となる。

Source:PCGamesN