米石油大手オクシデンタルは、アミノ酸ベースの炭素除去技術を持つスタートアップ、ホロシーンを買収した。これはOxy Low Carbon Venturesを通じた非公開金額での取引であり、同社が2023年に11億ドルで買収したカーボン・エンジニアリングに続く、直接空気回収(DAC)分野での戦略的投資となる。

ホロシーンは、Googleと締結した1,000万ドル規模の契約を通じ、2030年代初頭までに10万トンの炭素除去を1トンあたり100ドルという低コストで実現する計画を示している。現状、大気中の二酸化炭素除去コストは1トンあたり約600ドルとされるため、同技術の進展が業界のコスト構造に影響を及ぼす可能性があるとみられる。

オクシデンタルの戦略的買収が示すDAC技術の主戦場化

オクシデンタルは、Oxy Low Carbon Venturesを通じてホロシーンを買収した。これは2023年にカナダのCarbon Engineeringを11億ドルで買収した動きに続くものであり、直接空気回収(DAC)技術を軸とした炭素除去領域への本格的な布石と受け止められる。

ホロシーンはアミノ酸ベースの独自技術を用い、すでにGoogleと1,000万ドルの契約を締結しており、2030年代初頭までに10万トンのCO₂を1トンあたり100ドルという価格で除去する取り決めを交わしている。

現在、同様の炭素除去に要するコストは平均して1トンあたり600ドル前後とされており、ホロシーンの価格設定は業界水準を大きく下回る。オクシデンタルはこの価格優位性に着目し、同技術をEOR(石油増進回収)への活用に発展させることで、

自社の石油採掘効率向上と環境対応を同時に追求する構えである。DAC技術は米国のインフレ抑制法(IRA)のもとで税控除対象となることから、政策的支援も後押しとなっており、同分野の技術革新と実用化が資本と制度の両面で加速する可能性が高まっている。

価格破壊型モデルとしてのホロシーンとその技術的課題

ホロシーンの掲げる「1トンあたり100ドルでの炭素除去」は、従来のDAC技術では考えられなかった価格帯であり、Googleとの1,000万ドル契約は同社の技術信頼性を一定程度裏付けるものと見られる。

一方で、現在主流のDACプロジェクトが直面しているエネルギー消費量や設備コストの問題に対し、アミノ酸ベース技術がどのようなスケールアップ耐性を持つかは未確定であり、長期的な量産体制の構築には依然として課題が残されている。

また、回収されたCO₂の用途については、オクシデンタルが従来より進めてきた石油増進回収への適用が想定されているが、これが気候変動対策と本質的に一致するかどうかについては議論がある。CO₂の地下貯留が実質的に温室効果ガス削減へ直結するかは、注入後の漏洩リスクやライフサイクル全体での排出をどう捉えるかによって評価が分かれる。

オクシデンタルは投資回収と環境責任の両立を志向しているものの、その成否はホロシーン技術の実装速度と政策環境の継続的支援に大きく左右される可能性がある。

Source:TechCrunch