Motorolaは2023年の「Edge Plus」でハイエンド市場に再び存在感を示したが、2024年の「Edge 50 Ultra」は米国展開されず、多くの期待を裏切る形となった。2025年は「Edge 60」シリーズの登場が控えており、スペックやデザインの進化が期待される一方、北米市場での投入は不透明なままである。
米国スマホ市場ではAppleとSamsungが圧倒的なシェアを握るなか、Motorolaは約4%という存在感ながらも、安価な端末や折りたたみモデルで地道な基盤を築いてきた。PixelやOnePlusに対抗しうる第三の選択肢となるには、フラッグシップ機の投入こそが鍵を握る。競争が停滞する今こそ、Motorolaが真のポテンシャルを発揮する絶好のタイミングと言える。
Edge Plus (2023)が示したMotorolaの本気とその反響

Motorolaが2023年にリリースした「Motorola Edge Plus (2023)」は、Galaxy S23やPixel 7 Proと同等の性能を持ちながら、価格を抑えた挑戦的なフラッグシップ機として登場した。165HzのカーブOLEDディスプレイや68Wの急速充電、512GBのストレージ構成など、数値的なスペックだけでなく実際の使用感においても高評価を得た。ビルドクオリティやデザイン、指紋センサーの精度、電池持ちなど細部までこだわりが見える端末であり、レビューでは「その年のベスト」とする声もあった。
この端末の登場は、Motorolaが再びハイエンド市場に本格参入する意思を示したものであり、過去のMoto Xシリーズで見せたバランスの良さを現代的に再解釈した結果とも言える。特に、価格帯において他の競合製品を大きく下回る800ドルという設定は、パフォーマンスとコストの両面で強い魅力を放っていた。ただし、常時表示ディスプレイが非搭載であった点など、完全無欠とは言えない部分も残っていたことは否めない。
それでもこのモデルが証明したのは、Motorolaが今もなおフラッグシップ機において競争力を持ち得る存在であるということだった。機能面と価格面の両立が求められる現在において、Edge Plus (2023)のアプローチは他社にとっても脅威になりうるものだった。
2024年のEdge 50 Ultraが抱えた期待と北米市場での失望
2024年4月にグローバル市場で発表された「Motorola Edge 50 Ultra」は、Edge Plusの後継としてさらなる進化を遂げたモデルだった。新型カメラセンサーの搭載やディスプレイの輝度向上、防塵防水性能の強化、最大1TBのストレージ構成など、ハイエンド端末として申し分のない構成を揃えていた。加えて、Nordic Woodをはじめとした独自素材の背面デザインはMoto X時代を思わせる仕上がりで、往年のファンにも訴求する内容となっていた。
しかしながら、この端末は米国市場では展開されず、多くのユーザーにとって幻のフラッグシップとなった。北米では代わりに「Motorola Edge (2024)」という中位モデルが登場したが、Edge 50 Ultraの持つ魅力を求めていた層にとっては明らかに物足りない内容であった。Motorola側は「地域に応じた製品ポートフォリオの最適化」と説明しているが、北米のAndroid端末市場がPixelやSamsungに集中している今、こうした戦略はMotorolaの存在感を希薄にする可能性も孕んでいる。
アメリカのスマートフォン市場でシェア拡大を狙うなら、こうした高性能端末のローカル投入が不可欠である。見送りが続けば、Motorolaにとってはせっかく築き上げたイメージを自ら手放すことにもなりかねない。
フラッグシップ再投入がもたらすアメリカ市場での可能性
2025年4月時点で、「Motorola Edge 60 Fusion」が発表され、「Edge 60」「Edge 60 Pro」「Edge 60 Ultra」への期待も高まりつつある。これらの端末が米国市場で展開されるかは未定ながら、同社は「Edgeファミリーの北米強化に取り組む」とコメントしており、一定の前向きな動きも見られる。実際、StatCounterのデータではMotorolaはアメリカ市場で約4%のシェアを持ち、GoogleやOnePlusを上回っている点は注目に値する。
アメリカのAndroidフラッグシップ市場は現在、Samsungが保守的な製品路線を続け、Pixelはバッテリーや性能面での懸念が残る状況にある。さらに、OnePlusはキャリア展開が限られており、選択肢の幅が狭まっているのが現状である。こうした停滞感の中で、Motorolaが真のフラッグシップを投入すれば、それは第三の柱としての位置を確立する絶好のチャンスとなる。
もちろんAppleやSamsungに並ぶのは簡単なことではないが、過去の実績や販売チャネルの整備、ブランド認知といった要素は既に備わっている。必要なのは「やるかどうか」の意思決定だけであり、それが今まさに問われている。米国市場の活性化とブランド復権の鍵を握るのは、新たなEdge Plusの登場にかかっている。
Source:Android Authority