米J.P.モルガンは、NvidiaとAMDに対して2025年の1株当たり利益(EPS)が8〜10%減少する可能性があるとの警告を発した。背景には、米政府が中国へのAI半導体輸出に新たなライセンス制限を課したことがある。NvidiaはすでにH20チップの出荷停止によって55億ドルの在庫損失を計上しており、これは150〜160億ドル規模の売上影響につながると分析されている。

一方、AMDもMI308チップに関連して8億ドルの在庫リスクを公表しており、45〜55%の利益率を前提に15億〜18億ドルの売上喪失リスクが見込まれている。両社のデータセンター事業全体に与える影響は甚大であり、AI成長セクターへの地政学的な逆風が顕著になりつつある。

米国の対中輸出規制がNvidiaとAMDに与える収益インパクト

米国政府が導入した新たなAI半導体の輸出規制は、NvidiaとAMDの2025年業績に大きな打撃を与えるとされる。J.P.モルガンによれば、この規制により両社の1株当たり利益(EPS)は8%から10%減少する見込みだ。とりわけ、Nvidiaは中国向け出荷停止によって55億ドルの在庫関連費用をすでに計上しており、これは約150〜160億ドルの売上喪失に直結すると分析されている。この金額は、同社のデータセンター収益見通し1800億ドルの約1割に相当する水準である。

一方、AMDもMI308チップの輸出停止により8億ドルの在庫費用を抱えており、これに45〜55%の利益率を適用すれば、およそ15〜18億ドルの収益損失が予想される。両社に共通するのは、AI半導体の主力市場である中国への販売が実質的に制限されたことにより、高性能GPUの商業流通網に重大な断絶が生じた点である。今回の輸出制限は、政治的意図を含む米中関係の変化が、企業業績にダイレクトな影響を与えることを改めて浮き彫りにした。

AI半導体ビジネスの脆弱性と今後の戦略的転換

AI半導体市場はここ数年で急成長を遂げてきたが、今回の輸出規制は、その成長が地政学的リスクに強く依存している現実を浮かび上がらせた。NvidiaとAMDは、いずれも中国市場を主要な収益源としていたが、その販路が政治的な決定によって断たれたことで、AI事業の中核であるデータセンター向け売上に想定外の収縮が生じている。特にNvidiaは、在庫評価損失が5.5兆円規模に達し、これは一過性の調整というよりも構造的な再編を迫られる可能性を示唆している。

こうした環境下では、今後の収益の柱を中国以外の市場で確保できるかが焦点となる。欧州、東南アジア、中東といった代替市場の開拓や、政府との協調による規制対応型ビジネスモデルの再構築が不可避と見られる。また、製造・供給体制の多極化や、AI応用領域の分散も中長期的な命題となろう。単なるチップ開発だけでなく、地政学的リスクを織り込んだ包括的な経営戦略が求められる局面に入っている。

Source:yahoo finance