ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、過去25年で年率11.1%の驚異的なリターンを記録し、S&P500を大きく凌駕してきた。中でもムーディーズは2000年から保有され、信用格付け業界における高い参入障壁と安定したサブスクリプション収益により、長期保有に適した優良株と位置づけられる。
加えて、350億ドル規模の合併が進行中のキャピタルワンは、ディスカバーとの統合によりアメリカン・エキスプレスに似たビジネスモデルへの転換が期待されている。司法省による承認も追い風であり、今後の競争力強化が見込まれる。
一方で、アリー・ファイナンシャルは、自動車ローンに過度に依存する脆弱なビジネス構造と、フィンテック勢との競争激化により、投資家にとっては慎重な対応が求められる対象といえる。
ムーディーズが持つ参入障壁と安定収益構造

ムーディーズは、バークシャー・ハサウェイが2000年のダン・アンド・ブラッドストリートからのスピンオフ以降、継続して保有する中核銘柄である。世界に3社しかない主要な格付け機関の一角として、ムーディーズは市場全体の約32%を占めており、業界内での競争優位性は圧倒的とされる。格付け業務の信頼性は、長年にわたる規制対応と実績に裏打ちされており、新規参入の障壁は極めて高い。さらに、同社は信用格付け業務だけでなく、リスク関連データや分析業務を通じてサブスクリプション型収益を確保しており、金利動向による発行市場の変動リスクを和らげている。
実際、過去20年間で年率13.8%という高い株主リターンを実現しており、同業他社や市場平均を大きく上回っている。このような実績により、ムーディーズは短期的な景気動向に左右されにくい資産として、長期保有に適したポジションを維持している。ただし、格付けビジネスの本質が債券市場の活性度に依存している点には留意が必要である。市場全体の債券発行が縮小すれば、主力事業への圧力が増す構造であることは否定できない。
キャピタルワンとディスカバーの合併が描く新戦略
キャピタルワン・ファイナンシャルは、米国最大級のクレジットカード発行会社であり、2024年に発表されたディスカバー・ファイナンシャルとの350億ドル規模の合併により、戦略的な転換点を迎えている。この合併が実現すれば、同社は単なる発行会社から、決済ネットワークと自社カードを統合的に運用するアメリカン・エキスプレス型モデルへと進化する可能性がある。これにより、従来の利息収入に加え、スワイプフィーの獲得が可能となり、利益構造の多様化が期待される。
2025年4月には、米司法省が競争上の問題を理由に合併を阻止する十分な根拠が見当たらないと判断し、第一関門を通過。今後は通貨監督庁(OCC)やFRBの審査を経る必要があるものの、規制当局の判断は市場にとって前向きなシグナルとなった。ただし、キャピタルワンの顧客基盤はFICOスコアの低い層が多く、不況時にデフォルトリスクが高まりやすい。この点においては、信用ポートフォリオの健全性を慎重に見極める必要がある。合併によるスケールメリットと新たな事業領域への展開は注目に値するが、統合後の運営リスクを過小評価すべきではない。
アリー・ファイナンシャルの成長鈍化と競争環境の変化
アリー・ファイナンシャルは、近年自社の業務範囲を絞り込み、クレジットカード事業や住宅ローンの新規融資を停止するなど、主力分野である自動車ローンに経営資源を集中している。自動車金融市場では一定のプレゼンスを誇るものの、その根幹は景気循環に強く依存しており、金利の上昇や消費者心理の悪化が直接的に貸付実績や信用損失へ跳ね返る構造にある。総額1,450億ドル規模の融資・リース資産を抱える同社にとって、景気後退局面での貸倒リスクは無視できない水準となる。
さらに、デジタル銀行としての先行者利益も、SoFiやロビンフッドといった急成長中のフィンテック勢によって侵食されつつある。これら新興企業は積極的なキャンペーンと利便性の高いプラットフォームで急速に預金シェアを奪っており、アリーの強みだったオンラインバンキングの優位性が揺らぎ始めている。また、AIを活用した個人融資を展開するアップスタート・ホールディングスなど、新たな競合プレイヤーも台頭しており、自動車ローン領域における競争も激化している。
事業の収益源が限定的であり、変動要因に対して柔軟な対応が難しい現状を踏まえると、アリーは成長余地よりも脆弱性の方が目立つ状況にある。リスク分散が図られていない現在のビジネスモデルは、投資対象として慎重な評価が求められる。
Source:msn