NVIDIAはH20チップの対中輸出に対し米国政府から新たに輸出ライセンスを求められ、第1四半期に55億ドルの売上減を見込んでいる。H20は今月のデータセンター売上の13%を占めるとされ、短期的には痛手だが、Blackwellチップの需要急増やCUDAソフトウェアの普及が成長を下支えしている。

加えて、AmazonやGoogleなどのクラウド大手がAIインフラ強化のためにGPU投資を拡大しており、NVIDIAの市場優位性と収益性は今後も維持される見通しである。目先の課題を抱えながらも、Zacksは同社株に「買い」評価を継続。短期目標株価は54.8%引き上げられ、投資妙味は依然として高い状況にある。

NVIDIA、H20チップの対中輸出制限で55億ドルの打撃

NVIDIAは、H20チップの対中輸出に関し、米国政府から新たに連邦輸出ライセンスの取得を求められた。この措置により、同社は2025年度第1四半期において約55億ドルの売上減少を見込んでいる。H20チップは今月のデータセンター収益の12〜13%を占める重要製品であり、今回の制限は短期的には深刻な痛手である。背景には、米政権によるAI関連技術の対中輸出抑制があり、既にNVIDIAは高度なAIチップの輸出制限を受けている。この影響で、同社製品を採用していた中国のDeepSeek社が開発するコスト効率の高いチャットボットの事業も見直しを迫られる可能性が出ている。

ただし、NVIDIAはこうした逆風に対して過去にも柔軟に対応してきた実績がある。輸出規制の厳格化が再び収益構造を揺るがす可能性は否定できないが、同社の技術的優位性と市場シェアは依然として堅固である。今回の55億ドルという数値は短期的には大きなインパクトを与えるが、長期的な成長の道筋に決定的な影響を及ぼすとは断定できない。

BlackwellチップとCUDA普及が業績を下支え

NVIDIAの最新世代チップ「Blackwell」シリーズは、従来型のH20よりも性能・需要の両面で優位に立つ。H20チップは高性能モデルと比較すると機能が限定されており、今回の規制対象となったとはいえ市場の主軸ではない。その一方で、Blackwellチップの需要は日増しに拡大しており、出荷量も右肩上がりを維持している。これに加えて、開発者の間で支持を集めるCUDAソフトウェアプラットフォームの普及が、同社のエコシステム拡大に拍車をかけている。

NVIDIAはグラフィック処理ユニット(GPU)市場において80%超という圧倒的なシェアを維持しており、この技術的優位性が価格競争から同社を守っている。さらに、AI分野におけるソフトとハードの統合力は他社にない強みであり、短期の業績変動を補完する力を持つ。H20の一時的な落ち込みが注目される中で、実際にはより競争力の高い製品群への需要が堅調に推移しており、この構造的な強さが今後の業績安定に寄与すると見られる。

クラウド大手のAI投資と財務指標が支える買い評価

AmazonやGoogleをはじめとしたクラウド大手がAIデータセンター構築への投資を急拡大している。これに伴い、NVIDIA製GPUへの需要は確実に高まっており、AI分野における中核サプライヤーとしての地位は揺るがない。Zacks Investment Researchは、NVDA株の短期目標価格を従来の112.20ドルから173.63ドルへと54.8%引き上げ、さらに最高で220ドルまでの上昇余地があるとの見方を示している。この見通しは、同社の長期的な成長性を織り込んだ評価である。

財務面でも同社は安定した指標を示している。NVIDIAの予想PERは23.72倍と業界平均の28.7倍を下回り、割安感があるとされる。また、負債比率は10.7%と、同業他社の平均である20.1%よりも低く、リスク耐性も高い。こうした定量的裏付けを背景に、同社はZacksの格付けで「Rank #2(Buy)」を維持しており、堅実な投資対象として評価されている。短期的な懸念材料を抱えつつも、中長期では構造的な成長ストーリーに変化はない。

Source:yahoo finance