Microsoft Intuneを使ってWindows 11へのアップグレードをブロックしていた企業の一部デバイスに、意図せずWindows 11がインストールされる事例が相次いでいる。原因は2024年4月12日以降に発生したIntuneのバグによるもので、Microsoft自身が公式に認めている。影響はIntuneで管理されている端末に限られるが、対策が取られていない環境では今後も同様の事象が起きる可能性がある。

Microsoftはこの不具合の修正に取り組んでおり、当面の間はIntune経由の機能更新プログラムを一時停止するよう推奨している。一方で意図せぬアップグレードが発生した場合のロールバック方法には明確な自動手段がなく、復旧には手動でのWindows 10再インストールが必要となる。この点は管理工数と運用リスクの両面で無視できない。

管理ツールが逆に混乱を引き起こしている現状は、システム運用の信頼性にも影響を及ぼす懸念があり、今後の対応動向に注目が集まる。

Intuneの制御をすり抜けたWindows 11アップグレードの実態

Microsoft Intuneによるアップグレード制御ポリシーが適用されていたにもかかわらず、一部の業務用PCでWindows 11へのアップグレードが実行されていたことが判明した。これは2024年4月12日以降に発生したバグに起因しており、Microsoft自身もMicrosoft 365管理センター上でこの問題を認めている。影響を受けたのはIntuneによって管理されている環境に限定され、アップグレードのブロック設定が有効な状態でも強制的にOSが切り替わるという異常動作が報告されている。

このバグによって、数十台から数百台のPCを一括管理している企業や学校などでは、予期しないバージョン変更が発生し、業務アプリケーションの互換性や運用スケジュールに大きな支障をきたした可能性がある。特に業務用途では、OSのバージョンアップは一部のアプリ動作やドライバーとの整合性に影響を及ぼすため、タイミングや準備が慎重に調整される。そうした背景を無視する形でアップグレードが進んでしまった点は看過できない。

Microsoftは現在、問題の修正に着手しており、Intuneを通じたWindowsの機能更新プログラムを一時停止するよう推奨しているが、明確な修正完了のスケジュールは示されていない。今回のケースは、クラウド管理ツールの信頼性に対する疑念を招きかねず、システム管理における根本的な再点検が必要となる契機といえる。

ダウングレードのハードルが引き起こす現場の混乱

意図せずWindows 11にアップグレードされたデバイスに対し、現時点でMicrosoftは自動的なロールバック手段を提供していない。そのため、Windows 10への復元にはブータブルデバイスを使用した新規インストールが必要となり、手順は煩雑かつ時間的コストも高い。特に多数の端末を抱える組織では、手動対応を一斉に行うのは現実的ではなく、アップグレードを受け入れる以外の選択肢が取れないケースも想定される。

この対応の難しさは、セキュリティや運用安定性の観点でも課題を生む。たとえば、社内の標準OSをWindows 10に統一していた場合、アップグレードによって混在環境が生じ、管理ポリシーの一貫性が崩れる。また、Windows 11に未対応の業務アプリがある場合には、作業の停滞やエラー発生のリスクも高まる。企業内のIT部門にとっては、あらかじめ構築していた運用フローそのものが揺らぐ事態ともいえる。

こうした影響の広がりを考慮すれば、Microsoftにはより迅速かつ現場の負担を軽減する修復手段の提示が求められる。アップグレードトラブルのたびに再インストールを余儀なくされる状況は、現代のシステム管理の在り方として適切とは言い難く、今回の事象は将来的な運用戦略の見直しにもつながる可能性がある。

Source:PCWorld

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