ゴールドマン・サックスが、イーライ・リリー(ティッカー:LLY)の株式評価を「中立」から「買い」に引き上げた。評価変更の背景には、肥満・糖尿病治療薬「マンジャロ」と「ゼップバウンド」の急成長や、第4四半期における収益前年比45%増といった実績がある。アナリストのアサド・ハイダー氏は、リリーがインクレチン市場で先行者優位を有し、今後の成長を牽引する体制が整っていると指摘。
加えて、2024年には8件の第3相試験を開始し、KisunlaやEbglyssを含むパイプラインの拡充を図ると同時に、欧州・アジアにおける販売実績も急増。2025年の売上は最大610億ドル、利益は24ドル/株に達する可能性があると見込まれている。買収や製造体制強化を含む多面的な成長戦略により、イーライ・リリーは長期的な企業価値創出に向けた基盤を築きつつあるとの見方が強まっている。
肥満治療薬マンジャロとゼップバウンドの急成長が収益拡大を牽引

2024年第4四半期において、イーライ・リリーの売上は前年同期比で45%の急増を記録し、その主要因となったのが肥満治療薬「マンジャロ」と「ゼップバウンド」である。両薬剤の合計売上は56億ドルに達し、特にマンジャロが35億ドル、ゼップバウンドが19億ドルを構成している。これらの医薬品は、従来の糖尿病治療薬の域を超え、肥満分野における新たな治療基準を確立しつつある。肥満や心代謝疾患の領域で、より広範な適応症への展開が進んでおり、治療選択肢の転換を促している。
さらに、第4四半期において非インクレチン製品も20%の売上成長を示し、腫瘍学や神経科学、免疫学の分野での製品群――Omvoh、Jaypirca、Kisunlaなどが堅調な需要を支えた。こうした成果が、調整後利益106%増、1株当たり利益12.99ドルという高水準の財務実績につながっている。ゴールドマン・サックスの格上げの背景には、こうした多角的な成長実績があるといえる。
製品ポートフォリオのバランスの良さ、ならびに市場投入から収益化までのスピードが、今後の投資妙味を高めている。短期的な株価調整局面を戦略的な買い場とみなす見方も増えており、アナリスト予想では最大74%の株価上昇余地が提示されている。
欧州・アジア市場での加速的な拡販と製造能力拡大がグローバル成長を下支え
イーライ・リリーは、2024年に欧州の主要市場でマンジャロを展開し、中国においても早期アクセスの仕組みを確立したことで、海外売上が急増している。具体的には、欧州での売上が前年同期比82%増、日本では27%増、中国でも13%増と、地域を問わず明確な需要の高まりが見られる。加えて、製造拠点のグローバルな拡充も進んでおり、2025年前半にはインクレチン系医薬品の生産能力を前年比1.6倍に増強する計画が明らかにされている。
こうした国際展開の進展と並行して、2025年の売上見通しは580億〜610億ドルとされており、中央値で約32%の増加を見込んでいる。心不全治療薬Tirzepatideや乳がん治療薬Imlunestrantを含む第3相試験8件が進行中であり、その結果次第ではさらなる上方修正も現実味を帯びる。
グローバル展開においては、単なる販売地域の拡大ではなく、各市場の医療制度に対応した製品導入戦略が成果を上げている。これは、同社が持つ製造・流通・承認体制の一体化された機能が奏功していることの証左であるといえる。今後の成長は、こうした国際オペレーションの巧拙が左右する局面に入っており、その執行力が市場からの評価に直結する局面が続く。
Source:Barchart