独立系調査会社Hedgeyeが、新規上場企業CoreWeaveを強気の空売り候補として挙げたことが市場の注目を集めている。同社は、NVIDIAとMicrosoftへの過度な依存や、負債規模の大きさ、将来収益の不確実性をリスク要因として指摘する。一方、AI最適化に特化したクラウド設計や、OpenAIとの契約、急速に成長するGPU需要に裏打ちされた営業利益の改善が追い風となっており、事業基盤は必ずしも脆弱とは言い切れない。

CoreWeaveは過去2年で売上を1,580万ドルから19億ドルに急拡大させたが、同時に純損失は8億6,340万ドルに膨らんでいる。営業利益の黒字転換や、残存パフォーマンス義務151億ドルといった指標は成長持続の可能性を示唆する一方、旧世代GPUの在庫や競合Nebius Groupとの価格競争が今後の障壁となる可能性がある。事業の成長余地は大きいが、資金消費ペースと市場構造を踏まえた冷静な判断が求められる局面に差しかかっている。

CoreWeaveの急成長を支える営業指標と財務の脆弱性

CoreWeaveは2019年にクラウド事業へ転換して以来、AI・機械学習向けに特化したGPUインフラの構築によって急成長を遂げた。売上高は2022年の1,580万ドルから、2024年には19億ドルへと飛躍的に拡大している。その一方で、同期間の純損失は3,110万ドルから8億6,340万ドルに膨らんでおり、収益性の裏に深刻なコスト構造が潜んでいることが明らかである。

ただし営業損益には好転の兆しがあり、2022年に2,290万ドルの赤字であった営業利益は、2024年には3億2,430万ドルの黒字に転じた。これは営業利益率16%という水準であり、事業運営の効率改善が進んでいることを示唆する。

同社の成長持続力を図るもう一つの指標が「残存パフォーマンス義務(RPO)」であり、これは2024年末時点で151億ドル、前年比53%増という極めて高い水準に達した。加えて、営業キャッシュフローも2年間で約3倍に増加しており、流動性の向上も観察される。GPU保有数は2024年末に25万台、2025年にはさらに35万台追加予定であり、インフラ拡張の姿勢も鮮明である。しかし、同時に長期債務は55億ドルに達しており、これは現金保有高の14億ドルを大きく上回る。資産成長と債務拡大が並行するなか、財務の健全性には依然として慎重な評価が求められる。

技術最適化が生む競争優位とAI市場の拡大性

CoreWeaveが差別化に成功している主因は、GPUを最大限活用するための独自のクラウド構成にある。従来のクラウドではGPUの実効稼働率が35〜45%程度に留まり、システム構成の非効率やネットワーク遅延がボトルネックとなっていた。

これに対し同社は、AIアプリケーションに最適化された専用ハードウェア、ソフトウェア、低遅延ネットワークを統合することで「AI効率ギャップ」の解消を図っている。このアプローチは、AIモデルの訓練時間短縮とコスト削減に直結し、NVIDIAのBlackwellチップとの連携を前提としたGoogleによる利用の噂や、OpenAIとの120億ドル規模の契約からも、高度な最適化能力への期待が読み取れる。

また、CoreWeaveが属するAIクラウド市場の成長性は極めて高い。Bloomberg Intelligenceによれば、AI推論や学習インフラを含む関連市場は2023年の790億ドルから、2028年には3,990億ドルへと拡大が見込まれている。このうち学習インフラ市場だけで3,300億ドルに達する見通しであり、同社の提供領域と強く重なる。加えて、MetaやIBM、Mistral AIなどの顧客ポートフォリオが拡大しており、Microsoftへの収益依存度は高いものの、売上構成の多様化も進行している。成長市場における戦略的ポジショニングは明確であり、需要サイドの環境は極めて良好といえる。

資本負荷と競争環境が突き付ける持続性への疑問

急成長を支えるCoreWeaveのビジネスモデルは、資本支出と運転資金の大量消費を前提とする構造であり、短期的には営業利益の黒字化が実現している一方、フリーキャッシュフローは依然として大幅な赤字である。2024年時点では年間50億ドルを超えるキャッシュを消費しており、この水準を継続するには追加の資金調達が避けられない。現状の流動性が改善されたとはいえ、それが将来的な支出圧力に耐え得る十分な水準かは慎重な見極めが必要である。

さらに、競合の存在も無視できない。Nebius GroupはCoreWeaveよりも財務レバレッジが低く、価格面でも優位性を持つ。加えて、CoreWeaveのGPU在庫は主に旧世代の「Hopper」アーキテクチャに依存しており、今後のAI計算基準に対する適応力が懸念される。技術革新のスピードが速まる中、既存インフラが迅速に陳腐化するリスクは高まっている。こうした構造的な負荷と競争環境の変化は、短期的な業績好転とは裏腹に、長期的な持続可能性に一定の不確実性を与える要因となっている。ビジネスのスケール拡張と同時に、資本構造の再設計が急務である。

Source:Barchart