Intelのエントリー向けGPU「Arc B580」が、旧世代プロセッサーと組み合わせた際に顕著な性能低下を示すとして、同社はこの挙動について調査中である。249ドルの低価格帯ながら、高性能を誇るB580は、AMD Ryzen 7 9800X3Dでは健闘したが、Ryzen 5 2600との組み合わせでは平均22%の性能差が生じ、一部ゲームで30FPSを下回る事例も報告された。

この問題は、CPUオーバーヘッドに起因するとされ、Intelはフォーラム上で検証体制の強化と最適化の継続を明言した。旧型システムでの使用を想定するゲーマーにとって、GPUの導入がマザーボードやCPUの大幅な買い替えに波及する可能性があり、コスト上昇が深刻な課題となる。

既存構成のまま最新ゲームを楽しむには限界がある現状において、Intelの対応と最適化結果が市場の判断に与える影響は小さくないと考えられる。

Intel Arc B580に見られる旧世代CPUとの性能不整合

Intelが提供する低価格GPU「Arc B580」が、旧世代CPUと組み合わせた際に極端な性能低下を示す事例が、Tom’s Hardwareによる複数のベンチマーク検証で明らかになった。Ryzen 7 9800X3Dと併用した場合、Arc B580はおおむね安定したパフォーマンスを発揮し、Nvidia RTX 4060との比較でも約10%程度の性能差にとどまっている。

一方で、Ryzen 5 2600と組み合わせた際には、RTX 4060との平均性能差が22%に拡大し、一部タイトルではプレイアブルな水準とされる30FPSを下回るという深刻な問題が観測された。1% Lowのレートも大きく落ち込み、快適なゲーム体験を阻害する状況である。

この事象に対し、IntelはCommunityフォーラムにて「CPUオーバーヘッドに関連する性能の敏感さ」を認識しているとコメントしており、検証プロセスの範囲を拡大するとともに、最適化の調査を継続している。影響が大きいのは、B580の主なターゲット層とされる予算重視のユーザーであり、古いマザーボードやCPUを活用しながら最新GPUでゲーム性能を高めようとする用途では、本来のパフォーマンスが得られない可能性がある。

この問題が構造的な相性問題なのか、あるいはドライバーレベルでの最適化に起因するのかは現時点で明確ではない。今後のファームウェアやソフトウェア更新を通じたIntelの対応が注視される。なお、Nvidia RTX 4060ではこのようなCPU依存性の問題は顕著に見られておらず、GPU設計思想の違いも影響している可能性があると考えられる。

低価格ゲーミング市場におけるB580の戦略的課題

Arc B580は249ドルという価格設定でありながら、最新世代のGPUとして設計された点で競争力が高い。しかし、旧型CPUとの組み合わせで著しい性能劣化が起こることが明らかになった今、その導入判断は一層慎重を要する。

GTX 1060からの買い替えを想定してArc B580を選択したユーザーの中には、CPUがボトルネックとなり期待した性能向上が得られなかった事例もあるとされる。特に、AM3+や古いIntelプラットフォームを使用するユーザー層にとって、GPUだけでなくCPUとマザーボードの刷新が必要になるケースはコスト面での障壁となりうる。

AMDはAM4ソケットのサポートを2025年まで継続する方針を明示しており、同世代のCPUにアップグレードする余地が残されているが、それでも予算制約のある層にとっては負担が大きい。また、関税や半導体供給の影響により、PCパーツ全体の価格が上昇傾向にある現状では、B580の魅力である「低価格での導入」という前提が揺らぎつつある。

Intelが調査結果をもとにドライバー最適化を実施したとしても、物理的なオーバーヘッドが根本的な原因であれば解消には限界がある。この問題は、単なる個別事象にとどまらず、エントリークラスのGPUが直面するアーキテクチャ的な制約の象徴とも言えよう。性能と互換性のバランスを取ることが、今後のArcシリーズ全体の評価に大きく影響を及ぼす可能性がある。

Source:Tom’s Hardware