Intel Arc B580に24GBメモリ搭載モデルが存在するとの噂が、SparkleのSNS投稿を起点に拡散した。発言では、該当モデルが5月から6月に登場する可能性にも触れられていたが、直後にSparkleはこれを公式に否定した。情報の出所はITHome経由の内容とされており、同社がNDAの存在を意識して発言を撤回した可能性もある。
Intelの公式発表によれば、Arc BattlemageシリーズはBMG-G21ダイを用いたB570およびB580が中核となっており、24GB構成が実現されているとすれば、既存のArc Pro A60の倍となるVRAM搭載となる。大規模言語モデルや画像生成用途における活用が想定されるが、現時点でアーキテクチャ上はNvidiaやAMDよりも一世代遅れている。
価格帯における競争力や、仮に存在するのであればComputexでの発表可能性を含め、今回の一連の情報はIntelがAI対応GPU市場で次の一手を模索している兆候と受け取る余地がある。
Sparkleの情報発信と撤回がもたらした混乱

2025年4月、Sparkleが中国の動画プラットフォーム「Bilibili」において、Intel Arc B580の24GBモデルに関する言及を行い、同モデルの存在と5月〜6月の登場可能性が示唆された。しかし数時間以内にSparkleはこれを全面否定し、当該発言を削除するとともに公式に訂正を行った。この迅速な対応は、発言が非公開情報に触れていた可能性を示唆している。情報の発信源とされるITHomeの記事は削除されておらず、業界内での注目度は依然高い。
BattlemageシリーズのB580は、Intelが2023年末に発表した中位モデルであり、BMG-G21ダイおよび192ビットメモリインターフェースを搭載している。出荷書類からは他にG31やG10の派生も存在する可能性が示唆されているが、公式発表には至っていない。24GB構成は12個の16Gbモジュールによって達成される見込みであり、これは現行のArc Pro A60の倍に相当する。
今回の発言撤回は、開発中製品に関する情報管理の難しさを露呈した格好である。マーケティング戦略上の誤算というだけでなく、製品戦略全体の方向性が外部からの憶測を招く構図となっており、IntelにとってはAI・生成系分野向け製品展開に対する不透明感を拭いきれない状況にある。
AI向けGPU市場における競争力と制約
Intel Arc B580の24GB構成が仮に市場に投入される場合、その最大の利点は大容量VRAMにある。特に大規模言語モデル(LLM)やStable Diffusionのような画像・動画生成モデルにおいて、24GBというメモリ容量は計算処理の効率性に直結する要素である。既存のFlexおよびProシリーズの後継として、AI推論や生成系作業に特化したArc Proファミリーとしての展開も視野に入りうる。
しかし、アーキテクチャ面では課題も多い。BattlemageはNvidiaやAMDの最新世代よりも1段階遅れた設計であり、演算性能や電力効率では優位性を確保できないと見られている。特にNvidiaのBlackwell PROやAMDのRadeon PRO W9000のような製品群に対し、ハイエンド市場での競争力は限定的となる可能性がある。
価格戦略においても難しさがある。Intel B580のダイサイズは272mm²でN5プロセスを採用しており、対するRTX 5070(263mm²・N4P)は倍以上の価格設定がなされている。製造コストの差異は限定的とみられ、価格差の正当性を市場に示すのは容易ではない。これらの点から、B580のような中位製品を高付加価値分野に持ち込む戦略は、一定の技術的および収益性のバランスを必要とする。
Computexでの正式発表の可能性と今後の注目点
現時点でIntelはArc B580 24GBモデルの存在を公式に認めておらず、Sparkleによる一連の発言も否定されたままである。ただし、2024年のLunar Lake発表に倣い、今年のComputexでPanther Lakeに関連した発表とともに、AI用途向けGPUのラインアップ拡充に関する情報が開示される可能性がある。製品リリースのタイミングと市場との接点を意識した場として、Computexは戦略的に最適な舞台である。
Sparkleによる「誤報道」は、市場における情報管理と企業間連携のあり方を浮き彫りにした。NDAの遵守や発表時期のコントロールに失敗すると、ブランド価値や市場期待に直接的な影響を及ぼしかねない。特にAI関連市場は評価基準が曖昧であり、事前の噂が株価やパートナーシップに作用する可能性があるため、今回の一件はIntelにとっても重要な教訓となる。
今後の注目点は、正式な仕様発表がいつなされるか、そしてAI市場において同製品がどの用途に最適化されるのかである。計算能力ではなく、メモリ容量で差別化を図るという戦略が、AIワークロードの中でいかに実効性を持つかが問われることになる。
Source: Tom’s Hardware