テスラは4月22日の第1四半期決算を控え、年初から40%超の株価下落を記録している。納車台数の2桁減少やEPSの悪化が予測され、マグニフィセント7の中でも業績不振が際立つ状況にある。特に価格競争が激化する中国市場ではBYDなどが自動運転機能を無料提供するなど差別化が進んでおり、テスラのFSD戦略も試練に直面している。
ブランドイメージも政治的立場によって揺らぎ、欧州や中国での販売不振が表面化。アナリストは目標株価を相次ぎ引き下げ、成長ストーリーへの懐疑が強まっている。マスク氏がどこまで信頼を取り戻せるか、決算説明会が試金石となる。
納車台数減少とEPS低下が示す成長鈍化の実態

2025年第1四半期におけるテスラの決算は、同社の成長鈍化を明確に映し出す内容となる見込みだ。アナリスト予想では売上は215億ドルと、前年同期比でわずかな増加に留まるとされているが、その背景には納車台数の13%減という深刻な実績がある。とりわけ車両販売の柱であった「モデルY」以降に、魅力的な新車が投入されていないことが販売不振の一因とされており、低価格車の投入も2026年まで先送りされている。
EPSに関しても、GAAPベースでは横ばい、調整後ベースでは前年比6.1%の減少が予測されており、過去2年間で20%以上の下落という長期的な減益トレンドが続いている。価格引き下げによって販売を維持しようとする戦略が利益率の圧迫に繋がっており、この傾向は容易に反転する兆しを見せていない。
マスク氏が成長見通しとして掲げた「2025年に前年比30%の納車増加」という目標も、2024年の段階で早々に後退しており、株主への報告では「緩やかな成長回復への期待」と表現が修正された。このような姿勢の変化は、同社の短期的な回復力に対する市場の期待を抑制するものである。
年間を通じた売上成長率のコンセンサスは9.4%とされているが、納車台数の低迷を踏まえると、この予測には不確実性が大きく残る。収益構造の安定性と成長戦略の整合性が問われる局面に差し掛かっている。
中国市場での競争激化とFSD戦略の脆弱性
テスラの競争環境は、特に中国市場において急激に悪化している。BYDなどの中国EVメーカーが自動運転機能を無料で標準装備する戦略を採用し、価格競争の一歩先を行っている状況である。これに対し、テスラが提供する「完全自動運転(FSD)」は、技術的な優位性があったとしても8,000ドルという価格設定が消費者に受け入れられる保証はない。以前は15,000ドルで提供されていたこのFSDの価格が、短期間で2度引き下げられた事実は、需要の低迷を示唆するものでもある。
また、FSDの技術基盤に関しても疑問が残る。テスラはカメラのみで自動運転を実現する方針を貫いているが、センサーやLIDARを活用する他社と比較して安全性への信頼が揺らいでいる。実際にYouTuberのMark Rober氏によって公開された映像では、FSDが「錯覚の壁」に欺かれる様子が映し出されており、この技術がまだ完全な実用段階には至っていないことを浮き彫りにした。
さらに、同社が6月からオースティンで開始を予定しているロボタクシー事業についても、その基幹技術であるFSDが未完成である点は深刻な課題である。いくつかのFSD関連事故が規制当局の調査対象となっていることも、イノベーションに対する信頼性の低下を助長している。
長期的にはテスラのFSD戦略が競争優位を築く可能性も否定できないが、現時点では価格競争力と完成度の双方でライバルに後れを取っている構図が強まっている。今後の技術開発と収益化モデルの見直しが急務である。
Source:Barchart.com