2025年第1四半期、EDLキャピタルなどのマクロ志向型ファンドは、ヘッジファンド業界平均1.3%を大きく上回る17%のリターンを記録し、際立った成績を残した。背景には、金利ボラティリティや地政学リスクの高まりに機敏に対応する柔軟な戦術と、AI時代におけるアルゴリズムを超える判断力がある。

米中間の貿易摩擦やインフレ再燃への警戒が市場に重くのしかかる中、株式選定型ファンドは苦戦を強いられ、S&P500の年末予想も下方修正された。一方、マクロ戦略は非相関資産としての価値を発揮し、従来型ポートフォリオの限界を補完している。

こうした環境下、ボラティリティを好機と捉えるマクロファンドへの注目は高まっており、2025年を通じてその優位性は持続する可能性がある。変化を読む力こそが、難局を制する鍵となる。

マクロ戦略が示す市場変化の本質

2025年第1四半期、EDLキャピタルを筆頭とするマクロヘッジファンドは、業界平均の13倍となる17%の収益率を記録し、注目を集めた。株式選定型やマルチストラテジー型ファンドがAI主導のテクノロジー株下落に苦しむ一方、マクロ系ファンドは地政学的リスクやインフレ、金利変動といった複合的要因を逆手に取り、成果を上げている。とりわけ、ボラティリティの高い金利環境では歴史的にマクロ戦略が優位性を発揮してきた事例が多く、2025年もこの傾向が継続している。

3月7日のゴールドマン・サックスのレポートによれば、株式系ファンドの半数以上が年間リターンの50%以上を失ったことが示された。これを受けて、同社はS&P500の年末予測を6,500から6,200へと引き下げており、投資家心理の悪化と経済の減速懸念が色濃く表れている。マクロヘッジファンドが得意とするのは、こうした混沌とした局面でリスクと機会を見極める分析力と柔軟なポジション構築である。短期的な値動きに対応しながらも中長期的な地政学と金利構造の変化に着目するその姿勢は、今後の市場におけるポートフォリオ構成の再考を促す。

マクロ戦略の台頭は単なるトレンドではなく、従来型分散投資が限界に近づいていることを示すサインとも受け取れる。株式市場との低相関性を活かし、ボラティリティを収益源に変える手法は、環境変化に耐性のある資産運用モデルの新機軸となり得る。

ボラティリティを武器にする戦術的アプローチ

EDLキャピタルのようなマクロ系ファンドが突出した成績を挙げた要因のひとつに、市場の急激な変動を味方にする高度な戦術がある。特定の資産クラスに依存せず、為替・金利・クレジット・コモディティといった幅広い商品に対し、柔軟にポジションを取るこの戦略は、特に流動性の制約がある局面での機動力が際立つ。マクロファンドは損失を最小限にとどめる撤退の速さ、流動性の高いポジション構築、混雑した取引の回避といった特性を備えており、それが高リターンの基盤となっている。

さらに、AI技術の進化により短期的なアルゴリズム取引が主流になるなかで、マクロファンドは60〜90日の相関変動を重視する中期的な視野を保持する。こうしたアプローチにより、他のAIトレーダーが見落としがちな本質的な因果関係を掘り下げ、ポジションの優位性を獲得している。特定のデータに依存せず、相関構造や市場の因果変動を読解する能力こそが、2025年のような複雑な環境において最も重要な競争優位となる。

このような市場の読みと対応力は、単なる経験則ではなく、マクロ戦略の設計思想に根ざしている。変化の多い局面こそが実力を試されるタイミングであり、そこでの成功事例がマクロ戦略の再評価を促している。従来の「守りの戦略」から「攻めの柔軟性」へと位置付けが変わりつつある今、マクロファンドは新たな基準を提示している。

Source:Barchart.com