ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが保有する2,710億ドルの株式ポートフォリオの中から、今注目すべき2銘柄が浮上している。それがクラウドとAIを武器に急成長を遂げるAmazon、そしてグローバル決済ネットワークの覇者Mastercardである。
前者はeコマースから高収益な非小売事業へのシフトが進み、後者は堅牢なビジネスモデルにより景気後退時にも強さを発揮する。市場の変動が続く中、両社はいずれも長期視点での安定成長が見込まれるとされ、割高感を超える投資妙味が注目されている。
Amazonの非小売成長戦略とAI活用による競争優位の確立

Amazonはもはや単なるネット通販企業ではない。クラウドコンピューティング、広告、物流といった非小売分野が同社の主力収益源へと移行しつつあり、2024年にはAmazon Web Services(AWS)単体で売上1,076億ドルを計上、全体の17%を占めるまでに成長した。とりわけクラウド市場におけるAWSの存在感は際立ち、Synergy Researchの分析によれば、市場シェアは30%以上と、業界首位を維持している。加えて、AI技術の進展により、同社はクラウド上の処理能力の需要増という恩恵を享受しており、Alexa対応デバイスの累計販売台数は6億台を超え、AIを活用した顧客接点の広がりも無視できない。
このように、利益率の高い事業分野に軸足を移すAmazonの成長構造は、単なる物販の拡大とは異なる堅実性を帯びている。AIを活用したユーザー体験の最適化やリピート率の向上は、同社の収益基盤を中長期的に支えると考えられる。株価は現在、営業キャッシュフローの16倍という過去10年で最も割安な水準で推移しており、成長性とバリュエーションの両面で注目に値する。
Mastercardの高収益モデルとリセッション耐性が示す長期安定性
Mastercardは、2024年に9.8兆ドルという膨大な取引処理を実現し、売上高は前年比12%増の282億ドル、純利益は同15%増の129億ドルに達した。注目すべきは、この利益の多くが高利益率の決済インフラ事業から生まれている点にある。同社は銀行のように信用リスクを抱えず、主にカード取引の処理によって利益を上げている。業界には同様のネットワークを持つ企業は限られており、高い参入障壁が形成されている。
さらに、Mastercardの事業は景気後退時においても堅調である。実際、2022年の市場低迷期においても株価の安定性が際立っていた。これは、取引数に比例して手数料収入を得る同社のビジネス構造が、景気変動に対して比較的鈍感であることを示している。世界150カ国以上で利用可能な同社のサービスは、依然として1.5兆件に及ぶ現金取引の置き換え余地を残しており、今後も成長が続くことが見込まれる。利益の37倍という高めの株価倍率は、参入障壁と長期的な利益成長期待の裏返しであり、質の高いポートフォリオを目指す投資家にとっては合理的な選択肢といえる。
Source:The Motley Fool