Nothingの最新スマートフォン「Phone 3a Pro」は、透明デザインと光るGlyphライトを備えた個性的な外観と、EssentialキーやAI連携による新たな操作体験が特徴となっている。価格は459ドルながら、50MP望遠カメラやSnapdragon 7s Gen 3搭載により、上位機にも迫る性能を実現。バッテリーは5,000mAh、50W急速充電に対応し、日常用途では十分なスペックを誇る。

一方でワイヤレス充電やIP評価の省略、実店舗での流通不足など、課題も明確に残されている。特に米国市場では、Nothingが直販限定のベータプログラムとして提供しているため、サポートや買い替えの柔軟性に不安も残る。さらに国際情勢による関税の影響から、今後価格が上昇する可能性も否定できない。

デザインと操作性の両立に挑むEssentialキーとGlyphインターフェースの進化

Nothing Phone 3a Proでは、過去モデルから受け継がれたGlyphライトが引き続き搭載され、視覚的通知機能としての役割を担っている。特定の通知に限定して点灯させる設定が可能で、LEDによるミニマルなフィードバックがスマホとの距離感を調整する要素となっている。加えて、新たに搭載された「Essentialキー」は、視認性に優れた光沢仕上げで配置され、タップひとつでAIによる情報整理機能が作動する。スクリーンショット取得から文字認識、タグ付け、メモ添付といった一連の処理が一括で可能となる設計だ。

このキーの登場によって、PixelシリーズのScreenshotアプリを連想する場面もあるが、Nothing側は命令機能という要素を付加し差別化を図っている点が注目される。GlyphとEssentialキーという2つのインターフェースが、通知と操作という異なる分野で視覚的・直感的な利用体験を促進しており、同社のユーザー体験設計に対する一貫した哲学が感じられる。ただしEssentialキーの便利さを活かすには、ユーザーが自ら機能を理解し、カスタマイズする積極性が求められるため、定着には時間を要するかもしれない。

50MP望遠カメラの搭載がもたらす価格帯超えの撮影体験

Nothing Phone 3a Proに搭載された50MP望遠レンズは、3倍の光学ズーム対応により、従来ミッドレンジ機で課題とされてきた望遠性能を大きく引き上げている。ズーム時にも画像の鮮明さが保たれ、特に屋外での撮影では、Samsung Galaxy S25 UltraやXiaomi 15 Ultraといった上位機とも比較可能な画質を記録した。これは、従来のデジタルズーム頼りから脱却し、光学的手法で被写体を引き寄せられる点が大きな要因である。

ただし、暗所ではディテールがやや損なわれる場面もあり、画素数だけでは測れない画質のチューニングが課題として残る。とはいえ、459ドルという価格を考慮すれば、同価格帯のMotorolaやSamsungの競合モデルと比較して明らかなアドバンテージとなる。Nothingがこの価格帯で「上位機と張り合えるカメラ」を搭載した背景には、スペック表では測れない体験価値への重視があると考えられ、単なる性能競争にとどまらない設計思想がうかがえる。

ソフトウェアとパフォーマンスの両面から見るSnapdragon 7s Gen 3の実力

Phone 3a Proの心臓部には、Snapdragon 7s Gen 3と12GB RAMが採用されており、日常的なアプリ操作からゲームプレイ、映像視聴まで幅広いタスクをそつなくこなす性能が確認されている。特にSNSやブラウジングなどの軽量アプリでは極めて滑らかな動作を示し、Redditのようにテキスト量が多い場面でのみ一時的な引っかかりが発生する傾向があるが、これはOSの最適化次第で軽減可能と考えられる。

Nothing OSは、カスタムUIであるにもかかわらずクリーンさを保っており、プリインストールアプリの少なさが動作の軽快さを支えている。純正Android風への切り替えも可能だが、独自のドットマトリックス表現が視覚的な特徴を与えており、本機種特有の使用感として魅力を放つ。OSとハードウェアの融合度は高く、派手さを抑えながらも実用性を重視したアプローチが貫かれている点は、機能過多に陥りがちな他社とは一線を画する印象を与える。

Source:ZDNET