AMDは2025年4月22日、新たなWindows用チップセットドライバー(バージョン7.04.09.545)を発表した。対応範囲は最新のRyzen 9000シリーズから初代Ryzen 1000までと極めて広く、ソケットAM5およびAM4にまたがるデスクトップおよびモバイルCPUを包括する構成である。

今回のドライバーには目立った新機能は追加されていないが、過去のドライバーに戻れないという互換性の制約への対処策が盛り込まれた点が注目される。また、複数の既知の問題やバグの修正も行われており、実用性向上を重視したメンテナンスリリースと位置づけられる。

この一連の更新は、ハードウェア互換性の堅牢化と信頼性の強化を目指すAMDの姿勢を示すものであり、システム安定性を重視するユーザーにとって有益な内容となり得る。一方で、従来のバージョンへの戻し方に注意を要する点は、導入前に確認すべきリスクといえる。

Ryzen 9000から1000まで網羅した異例の対応範囲とドライバー構成

2025年4月22日にリリースされたAMDの新チップセットドライバー「バージョン7.04.09.545」は、Ryzen 9000(Zen 5)からRyzen 1000(Zen 1)まで、実に5世代以上にわたるCPUに対応している。ソケットAM5およびAM4を基盤としたデスクトップ環境はもちろん、モバイルプラットフォームまでを含む包括的な設計となっているのが最大の特長である。これにより、最新アーキテクチャを導入したユーザーと、依然として旧世代を運用するユーザーの双方が同一ドライバーで運用できるという柔軟性が担保される。

本パッケージには新たなプログラム追加こそないものの、幅広いデバイスIDの追加や複数のバグ修正が盛り込まれており、更新内容の細やかさが際立つ。特に「AMD PSP Driver」や「AMD PMF-8000Series Driver」などに施された修正は、セキュリティ機能や省電力性能に影響する重要な部分である。

このような広範囲な世代対応と微細なバージョン更新の積み重ねは、AMDがチップセットレベルでの製品安定性と長期サポートを重視していることを明示する動きである。短期的な機能革新よりも、堅牢なプラットフォーム構築を志向している姿勢が窺える。

互換性制約への対処が求められる理由と実運用での留意点

今回の新ドライバーでは、旧バージョンへのロールバックが不可能になるという制限が付されている。具体的には、「AMD Chipset Installer」のバージョン7以降を導入すると、それ以前の6系統には戻せない構造になっている点が問題視されている。AMDはこれに対し、特定フォルダの削除やアンインストールによる回避策を提示しているが、手動操作が必要であり一般ユーザーにとっては負担が大きい。

また、英語以外のOS環境ではドライバー名が一部英語で表示される現象や、「Ryzen PPKG」のインストール失敗など、言語設定や構成によって再現性のある既知の不具合も報告されている。これらは致命的ではないものの、導入後の予期せぬ混乱を招く要因となり得る。

本件から導き出せるのは、システム更新における「互換性の持続性」が依然として重要な課題であるという点である。利便性やセキュリティ向上を優先する一方で、後戻りできない設計変更は、特に法人用途や長期運用を前提としたシステムにおいては慎重な導入判断を促すべき要素といえる。

セキュリティ重視と低消費電力設計に向けた最適化の進展

今回のドライバー更新では、「AMD PSP Driver」や「AMD PMF Ryzen AI 300 Series Driver」といったセキュリティや電力管理に関するドライバーで複数の修正が行われている。中でもMicrosoftのPlutonセキュリティプロセッサへの対応が強調されており、TPM代替機構としてのPlutonが標準化されつつある現状に即した調整といえる。これにより、ハードウェアレベルでのセキュリティ強化が図られ、企業ネットワークや政府系機関での採用にも資する構成となる。

さらに、「AMD PPM Provisioning File Driver」や「PMF-8000 Series Driver」などのバグ修正は、省電力制御や動的パフォーマンス管理に直結する内容であり、長時間のバッテリ駆動や熱制御に課題を持つノートPC環境での安定性向上に貢献する。

このようなセキュリティと省電力という両軸の最適化は、単なる機能追加では得られない信頼性の基盤を形成する。ドライバー設計において、目立たない部分であっても中長期的に効く調整が評価される時代において、本リリースは慎重かつ計画的な技術戦略の一環と位置づけることができる。

Source:Neowin