Microsoftは、Windows 10向けの4月「C」更新プログラムとして、ビルド19045.5796ことKB5055612を配信開始した。本アップデートは、WSL2環境におけるGPUパラバーチャライゼーションの不具合を修正するとともに、悪用が報告されている脆弱なドライバー群を新たにブロックリストへ追加することでカーネルレベルのセキュリティ強化も図っている。
この修正により、大小文字の識別ミスに起因した仮想GPUサポートの失敗リスクが回避される見通しであり、開発・研究用途でWSL2を利用するユーザーには実務上の恩恵が大きい。一方で、Citrix利用環境やSgrmBroker.exe関連の軽微な既知バグは依然として存在し、慎重な運用判断が求められる。
今回の更新は任意での適用が可能であり、今後の定例更新に統合予定となっている。機能的な恩恵と既存環境への影響を天秤にかけ、導入タイミングの見極めが重要となろう。
Windows 10 KB5055612がWSL2におけるGPU仮想化機能の信頼性を向上

KB5055612では、Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)におけるGPUパラバーチャライゼーション機能の不具合が修正された。問題の原因は、仮想GPUドライバの識別における大小文字の扱いであり、これが正確に判定されないことで仮想GPU機能が一部の環境で無効となる可能性が指摘されていた。
この修正は、主にGPUを活用した機械学習や科学技術計算にWSL2を利用する開発者や技術者層にとって、安定的な動作環境を提供する点で意義がある。
WSL2は近年、ネイティブに近いLinux動作環境をWindows上に実現する選択肢として普及しており、GPU資源の有効活用はAI開発など高度な用途において不可欠な構成要素となっている。今回の修正は、そうした専門的な運用における信頼性向上につながり、Windowsプラットフォーム上でのWSL2活用のさらなる推進を後押しするものと捉えられる。
脆弱なドライバー遮断によるカーネルセキュリティの補強措置
KB5055612では、Windowsカーネルの脆弱なドライバーブロックリスト「DriverSiPolicy.p7b」が更新され、BYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)と呼ばれる攻撃手法で悪用された複数のドライバーが新たに遮断対象として追加された。この対策は、OSの権限昇格やマルウェア常駐の手段として過去に悪用された前例のあるドライバーを排除することを目的としており、脅威の封じ込めを図る防衛線の一つとして機能する。
とりわけエンタープライズ環境では、サードパーティドライバーの導入がセキュリティホールとなるケースもあるため、本件は運用管理者にとって注目度が高い。更新されたブロックリストは、将来の攻撃手法にも応用され得る脆弱性の温床を事前に抑制する意義を持ち、Microsoftがゼロトラストセキュリティ戦略の一環として打ち出す防御姿勢の延長線上に位置づけられる。
既知の軽微な不具合と今後の展開に対する注意点
本更新には、Citrix製ソフトウェアとの一部互換性問題や、SgrmBroker.exeに関連するWindowsイベントログの誤記録といった既知の不具合も継続して報告されている。Microsoftはこれらの事象について重大な影響はないとし、特に後者については無視して差し支えない旨を明言しているものの、業務システムにおけるログ運用や運用管理上の正確性を重視する場面では留意すべきである。
また、KB5055612は任意の更新として配信されており、ユーザー側の選択で適用が可能である一方、今後の定例セキュリティ更新(通称パッチチューズデー)には強制的に統合される予定であるため、現段階での導入を見送った場合でも中長期的にはシステム環境への影響が不可避となる。既存環境の互換性や安定性に配慮しつつ、タイミングを見極めた適用判断が求められる。
Source:Neowin