Appleが今秋発表予定のApple Watch Ultra 3は、5Gセルラー通信と衛星メッセージング機能を搭載し、iPhoneを携帯しない生活を推進する設計とされている。これにより、都市部のユーザーであってもスマートウォッチ単体でナビゲーションやメッセージ送信、情報取得が可能になる見込みである。

Apple Watch単体での利用シーン拡充を目指すこの進化は、アウトドア志向のユーザーのみならず、日常生活においても恩恵を受ける可能性がある。一方で、watchOSのアプリ制限やカメラ機能の不在といった課題は、iPhone完全不要の世界を実現するには未解決のままである。

5Gと衛星通信の統合でApple Watch Ultra 3は単体利用を本格化

Apple Watch Ultra 3は、2025年秋の登場に向けて5Gセルラー通信と衛星メッセージング機能の搭載が計画されている。これにより、通信網が不安定な山岳地帯や電波の届かない地域でも、緊急時のメッセージ送信が可能となる。従来モデルで指摘されていた「通信の脆弱さ」という課題を克服し、iPhoneを携帯しない外出というライフスタイルの現実味を一層高めた。

特に5G対応は、Siriの利用や地図ナビゲーション、ストリーミングといった情報取得の即時性に貢献する。この進化により、従来は一部のアウトドア志向のユーザーに限定されていた「iPhoneレス体験」が、都市生活者にとっても実用レベルに達しつつある。

しかし、TelegramやSnapchatといったwatchOS非対応のアプリや、カメラ機能の非搭載といった点は、スマートフォン完全不要という理想にはまだ隔たりがある。とはいえ、Appleが今回のモデルで見せた方向性は、将来的に「腕時計がスマートフォンの代替となる」という構図を明確に意識した戦略の一環と位置づけられる。

日常ユースへの拡張とwatchOSの限界

Apple Watch Ultra 3の新機能は、これまで限定的だった用途を日常のあらゆる場面に拡張する意図が読み取れる。ニューヨーク市在住の筆者が紹介したように、「iPhoneを自宅に置いて外出する」という選択は、都市生活においても十分に成立する体験となりつつある。

5G通信の高速化と安定性、そして衛星通信の追加は、Apple Watch単体での地図検索、メッセージ送信、音声アシスタントの利用を、これまで以上に現実的なものとしている。ただし、現時点ではwatchOSの制限により、iOSで提供されるフル機能には到底及ばないという現実がある。

ユーザーはLINEのような一部アプリで通知を確認できても、インタラクティブなやり取りやアプリ間連携においては依然としてiPhoneが必要である。また、カメラが搭載されていない点は、写真共有やQRコード読み取りなど日常的に行う操作の代替を困難にしている。

これらの制限は、Apple Watchが完全な独立デバイスとなるにはなお時間を要することを示しているが、その方向に向かう進化は確実に進行している。

Source:9to5Mac