ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2025年3月末時点で3,008億7,000万ドル相当の米国財務省短期証券(Tビル)を保有し、同市場全体の約4.89%を占めるまでに至った。これはFRBのTビル保有額1,950億ドルを上回り、単一企業としては異例の規模である。背景には、短期利回りの高さと魅力的な投資先の欠如があり、現金の90%をTビルで運用するバークシャーの慎重姿勢が鮮明となっている。
この動きは、過熱する株式市場や買収競争に対して過度なリスクを取らず、理想的な投資機会が訪れるまで待つという、バフェットの一貫した投資哲学を象徴するものである。株式市場の下落が続く中、同社が次に動き出す時機は市場全体の転換点を示唆する重要なサインとなり得る。
バフェットが築くTビル要塞 3,008億ドル超の保有が示す安全資産への強い志向

バークシャー・ハサウェイは、2025年3月末時点で3,008億7,000万ドル相当のTビルを保有し、米国財務省短期証券市場の4.89%を占有するまでに至った。これは現金同等物と短期投資の両面からTビルを戦略的に組み込んだ結果であり、FRBの保有額約1,950億ドルすら上回る水準である。この圧倒的な規模は、米国最大の非政府主体による安全資産への強固な傾斜を象徴している。
同社は、現金および短期運用資産の90%をTビルに充てており、金利環境や市場の流動性への備えを重視している。2025年4月時点でのTビル平均利回りは4.359%と相対的に高水準であり、流動性を保ちながら利回りを確保できる稀有な投資先として機能している。バフェットは過去にも資産価格の高騰局面で慎重な現金保有策を選択しており、今回の巨額Tビル保有も同様の文脈で理解される。
この選択は一過性の動きではなく、バフェットの長年の投資哲学に根差す。市場の割高感や買収競争の過熱を冷静に見極める姿勢が、企業買収よりもリスクの低い国債の保有へとつながっている。バークシャーの慎重なキャッシュ運用は、他の企業や投資家にとっても、波乱の時代におけるリスクヘッジの一つの模範となる。
買収に動かぬバフェットの静かな示唆 市場の高値圏と投資機会の見極め
バークシャー・ハサウェイは、近年の高水準の企業評価と買収競争の激化を背景に、大型買収に慎重な姿勢を堅持している。エネルギー、保険、鉄道、消費財など多様な事業を抱えながらも、過去2年間においては積極的な買収行動を見せていない。現金保有額が3,340億ドルを超えるにもかかわらず、流動性を維持したままTビルに資金を振り向けている点が、今の市場環境への評価を物語っている。
この動きは、単なる安全志向というよりも、現在の株式市場が過熱しており「割安な投資対象」が存在しないという冷静な観測に基づく可能性がある。バフェットはこれまでも市場が適正価格を超えた局面では慎重に行動し、機が熟すまで待つことを厭わない姿勢を貫いてきた。「ファット・ピッチ」が来るまでバットを振らないという彼の哲学が、今回のTビル戦略にも反映されている。
この姿勢は、他の投資家に対して市場タイミングの重要性を問いかけるものである。短期的な収益を追うのではなく、長期的なリターンと安全性の両立を追求するアプローチが、バークシャーの資本配分戦略の根幹にある。今後、バフェットが再び買いに動く時期は、株式市場の転換点を示すサインとなる可能性があるが、現段階ではなお静観を貫いている。
Source: Barchart