2025年4月、COMEX金先物(6月限)は1オンスあたり3,509.90ドルに達し、史上最高値を更新した。価格上昇はパラボリックな様相を呈しており、RSIやスローストキャスティクスに「弱気乖離」が現れている。RSIは79.18と過熱圏にあり、短期的には価格のピークが近い可能性を示唆している。さらに、米ドル指数が3年ぶりの安値を記録し、金価格を下支えしている点も注目される。金市場を支える根底には、リスク回避の世界的な資金シフトと、各国中央銀行による外貨準備の構成変更がある。

こうした状況は、長期保有者には心強い材料である一方、短期投資家にとっては急落リスクとの対峙を意味する。特に「ブローオフ・トップ」が示唆される局面では、価格が「エスカレーターで上がり、エレベーターで下がる」展開が過去にも確認されてきた。現在の金価格は、世界経済の不安定さを織り込んだ反応であり、楽観的な見通しには依然として慎重な姿勢が求められる。

金価格3,509ドルに到達 過熱を示すRSIと価格乖離の兆候

2025年4月時点でCOMEX金先物(6月限)は史上最高の1オンスあたり3,509.90ドルに達し、価格上昇は「パラボリック」と形容されるほど急激である。この上昇の背景には、米ドル安と地政学リスクの増大があるが、同時にRSI(相対力指数)は79.18と過熱を示しており、短期的な過剰買い状態にある。RSIやスローストキャスティクスはともに「弱気乖離」を示しており、価格が新高値を更新している一方で指標がピークに達していないことから、テクニカル的な反落リスクも示唆されている。

このような兆候は、過去の金市場でもブル相場の最終局面において繰り返し観測されてきた。いわゆる「ブローオフ・トップ」、すなわち急騰後の急落の前兆が意識される局面にある。市場に精通した投資家ほど、この段階での利確やポジション整理を検討する傾向が強まる。

一方、金のファンダメンタルズは依然として堅固であり、短期の価格調整があっても、構造的な強さを背景に中長期では再度の上昇基調も視野に入る。重要なのは、価格動向の急変リスクとテクニカル指標の示唆を冷静に読み解くことである。

グローバルなドル回避が中央銀行の金買いを加速

現在の金価格の高騰には、外国為替市場における米ドル指数の急落が密接に関係している。2025年4月時点でドル指数は過去3年間の最安値を記録し、世界的にドル資産への依存度を減らす動きが加速している。特に中国など一部主要国の中央銀行が、外貨準備における米国債やドル資産の比率を下げ、代わりに金保有を積極的に増やしている。この動きは金市場にとって恒常的な買い支えとなっており、価格の底堅さの背景となっている。

ただし、これらの動きは必ずしも市場に永続的な追い風を与えるとは限らない。ドル安が一巡した場合や、グローバルなリスクオフ環境が沈静化した際には、金価格の調整局面も想定される。また、先物市場においては極端なシナリオを前提とする投機的取引が顕在化しており、その影響でボラティリティが異常に高まっている点にも注意が必要である。中央銀行の金買いというファンダメンタルズの強さに加え、先物市場での過熱感とのバランスを見極める姿勢が重要となる。

短期投資家にとっての転換点 戦略なき売りは危険

短期的に金価格の急上昇に乗った投資家にとっては、現在の局面が一つの転換点となる可能性がある。パラボリックな値動きと100ドル以上に及ぶ日中の価格変動幅は、投機筋の活発な参入を物語っている。しかしこのような急騰局面では、心理的高揚に乗じた買いが失速しやすく、反転時には急落のリスクが伴う。特に現物市場での空売りは極めて危険であり、損失拡大を招きやすい。

一方、リスクを抑えた投資戦略として、金先物におけるアウト・オブ・ザ・マネーのプットオプション購入が挙げられる。これにより価格下落時のヘッジを図ることができるが、現在のオプション市場はプレミアムが高騰しており、コスト面の負担が大きいという現実もある。市場の急変に備えた柔軟な戦略構築が求められ、安易な順張りや逆張りは控えるべきである。短期的な価格変動の激化は、冷静なリスクマネジメント力を投資家に突きつけている。

Source: Barchart.com