ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、保有資産の中核にアップルを据え、アマゾン株も1,000万株以上保有している。従来の「割安株重視」の印象とは異なるこの動きは、成長株の中にも持続可能な競争優位や高い参入障壁といった「本質的価値」を見出していることを意味する。

ジョンソン・インベストメント・カウンセルのライナート氏によれば、PBRやPERといった表面的な数値だけでは捉えきれない価値の見極めが、今のバークシャーの投資哲学を裏打ちしている。

アップルとアマゾンを中核とするバークシャーの株式戦略

バークシャー・ハサウェイは、保有株式ポートフォリオの最大比率を誇るアップル株を筆頭に、アマゾン株も1,000万株保有している。これらはいずれも「成長株」として知られるが、ウォーレン・バフェットの哲学に照らせば、「価値ある成長株」としての位置づけにある。ジョンソン・インベストメント・カウンセルの最高投資責任者チャールズ・ライナート氏によれば、両社は一般的な株価収益率(PER)では測れない内在的価値を持ち、それゆえに「外れ値」ではなくむしろ理にかなった投資対象とされる。

特にアマゾンのAWSは多くの企業のIT基盤を支え、アップルは独自のエコシステムを通じて継続的なユーザー囲い込みを実現している点が評価されている。これらの投資対象は、単なる株価上昇を狙ったものではなく、長期にわたって他の産業全体にも波及効果をもたらす戦略的資産と捉えられる。成長株でありながらも、生活基盤の一部として浸透している点こそが、バフェットが重視する「本質的価値」の体現である。

「成長=割高」の先入観を覆すモート理論と価格決定力

バフェットと故チャーリー・マンガーが重視してきたのは、競争優位性(経済的な堀)と持続的な価格決定力である。彼らは、割安か否かを単にPERやPBRといった伝統的指標で判断することを否定し、むしろ企業が生み出す長期的な収益構造に注目する。アップルのプロダクトは高価格帯であっても顧客離れが起きにくく、サブスクリプション型収益とApp Store経由の経済圏によって、安定した利益構造を形成している。

アマゾンにおいても、AWSによる法人向けの依存度が高く、プライム会員制度による囲い込み戦略も奏功している。これらの構造は、一見して成長株と見られながら、長期的な収益予測の信頼性という点で、価値株に匹敵する安定性を内包している。つまり、割安株=価値、成長株=高リスクという図式は、両社のような例外的な企業には適用できない。市場における評価軸を複眼的に捉える必要性が浮き彫りになる。

個人投資家が学ぶべき「カテゴリを超えた選別眼」

今回のバークシャーの選好が示すのは、成長と価値という二項対立の概念に固執することの危うさである。投資信託などにおける成長型・バリュー型といった分類はあくまで形式的なものであり、実際の企業価値はその事業モデルの中核に何があるかに依存する。個人投資家にとって重要なのは、投資対象が持続可能な収益モデルを有しているか、競争優位性を保てているか、そして顧客基盤を長期にわたって保持し続けられるかである。

ライナート氏の見解によれば、こうした企業分析の基本を怠れば、ラベルに騙されて本質的価値を見逃すことにもつながる。さらに、市場の波に一喜一憂するのではなく、自身の投資方針に軸を持ち続ける「感情の安定性」も欠かせない要素とされている。バフェットの戦略から学べるのは、銘柄選定においては「形式」ではなく「構造」に注目すべきだという一貫した姿勢にほかならない。

Source:msn