Samsungは2025年末をもってDDR4メモリの生産を終了し、DDR5、LPDDR5、HBMといった新世代メモリへの集中を進める方針を明らかにした。DigiTimes Asiaによれば、8GBおよび16GBのモジュール出荷も同年12月までに打ち切られる見通しである。

背景には、GPUやAI分野向けに需要が高まる高帯域幅メモリへの生産シフトと、中国勢による価格破壊がある。CXMTはすでに月産20万ウェハーに達し、さらなる拡大を予定。再利用品よりも安価な新チップの登場が、大手の撤退を後押しした格好だ。

一方、DDR4を求める市場は依然として存在し、メモリモジュールメーカーでは供給確保のため備蓄を進める動きも見られる。価格は一時的に上昇しており、台湾勢のWinbondやNanyaにとっては追い風となる可能性がある。

DDR4終了の背景にある中国勢の価格攻勢と技術移行の加速

Samsungが2025年末でDDR4メモリの生産を打ち切る決断に至った要因のひとつとして、CXMTや福建晋華といった中国メーカーによる攻勢がある。これらの企業は、再利用チップを下回るほどの価格でDDR4メモリを提供しており、市場価格を最大で50%押し下げた。さらに、CXMTは2024年末時点で月産20万ウェハーという規模に達しており、今後は30万ウェハーへの拡大も視野に入れている。こうした大量供給と低価格化の波は、大手メーカーにとって持続的な収益確保が難しい環境を生み出している。

一方で、Samsungが注力するDDR5やLPDDR5、HBMといった次世代メモリは、AI処理や高性能グラフィック用途を想定した高利益率製品であり、企業戦略上の重点が完全に移行しつつある。旧世代製品へのリソース配分を続けることは、技術開発や供給体制の最適化に逆行する。競合であるSK HynixやMicronも同様に、先端製品への集中を進めていることから、DDR4の終焉は大手各社にとって自然な流れと言える。

ただし、現段階でDDR4への需要がゼロになったわけではなく、特に中小の自作PC市場では引き続き一定のニーズが存在する。その点で、供給から撤退する各社の判断が価格や入手性にどう影響するか、慎重な見極めが求められる局面でもある。

台湾勢と米中関係が左右する今後のDDR4供給と価格動向

DDR4メモリの供給状況において、Winbond ElectronicsやNanya Technologyといった台湾メーカーが新たな存在感を見せ始めている。SamsungやSK Hynixが市場から退く中、DDR4の価格はすでに10%の上昇を記録しており、これにより供給を継続する台湾勢には追い風が吹いている状況である。また、メモリモジュールメーカーが備蓄を増やす動きも確認されており、流通在庫の確保が市場の安定性を保つ鍵となる。

さらに重要な要素として、米中貿易摩擦の影響も見逃せない。トランプ前大統領時代の関税政策によって、中国製品に対して245%という高率関税が課されている現在、中国系チップの流通には大きな制約がかかっている。このため、価格競争力を持ちながらも信頼性で劣る中国製チップが一部市場では避けられる傾向にあり、台湾製チップへの注目が集まる背景となっている。

ただし、この需給構造が長期的に続く保証はなく、貿易政策や技術供給網の変化により、状況が急変する可能性も否定できない。技術移行が進むなかで、DDR4という世代のメモリがどのような形で残るかは、政治経済的な影響を強く受ける領域といえるだろう。

Source:Tom’s Hardware