2024年5月、バークシャー・ハサウェイの年次総会を控えたウォーレン・バフェットは、米国株式市場の混乱の中でも一貫した投資原則を改めて示した。トランプ前大統領によるFRB議長への圧力や金利政策の不透明感が市場を揺るがすなか、S&P500は2月高値から約14.5%下落し、投資家心理は不安定さを増している。

バフェットはかつての金融危機時と同様に「恐怖が広がるときこそ買いの好機」と説き、長期的視点に立った投資こそが資産形成の王道であると強調する。2008年の寄稿文を引き合いに出しながら、米企業の本質的価値は短期的な不安定要素に左右されないという信念を貫いている。

仮に株価がさらに下落しても、恐怖で売るのではなく、分散されたポートフォリオを継続的に買い増す姿勢が、次なる市場の上昇局面での果実となるという彼の哲学は、依然として多くの示唆を与えている。

市場が直面する二重のリスク構造とその影響

2024年5月、米国株式市場はトランプ前大統領のFRBへの強硬発言と、それに伴う政策不確実性に揺れた。とりわけ「パウエル議長の解任」という発言が波紋を広げ、S&P500は2月の高値から約14.5%下落した。市場の乱高下は、金利政策に対する先行き不透明感と、トランプ氏の貿易政策への警戒心という二重のリスク構造を反映している。U.S.バンクのロバート・ホーワース上級投資ストラテジストは「市場は方向性の欠如に翻弄されている」と分析する。現時点では一時的な反発も見られるが、根本的な不安材料が解消されたわけではない。

このような環境下では、従来の経済指標や企業業績以上に、政治的な発言や突発的なリスク要因が相場に影響を及ぼす構図が続く可能性がある。加えて、退職者など投資収益に依存する層にとっては、短期的なボラティリティが生活設計を揺るがしかねない重大要因となり得る。市場の値動きだけを見て右往左往するのではなく、政策とマクロ要因の構造的変化を丁寧に見極める必要がある。

バフェットが貫く長期投資哲学の意義

このような混乱の最中、ウォーレン・バフェットが2008年の金融危機時に掲げた「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲になれ」という原則が再び注目されている。彼は短期的な市場の恐怖に動じることなく、安値での株式取得を好機と捉え、着実に資産を積み上げてきた。事実、2007年から2009年にかけての暴落局面では、彼は債券中心の資産を米国株へ大胆に振り分け、その後の急回復で成果を上げている。

このアプローチは、米国企業の長期的な収益性と市場全体の右肩上がりの成長性への信頼に支えられている。バフェットは「一時的な恐怖による売りは合理的でない」と語り、今後も数十年単位で利益を更新していく企業が大半だと指摘する。短期的なニュースに翻弄されず、自身の投資軸を明確に持ち続けることが、変動の時代において重要性を増している。特に資産形成期にある者にとって、長期的な視座と冷静な行動が最も確かな武器となる。

Source:msn