S&P500が1月以降12%下落する中、ウォーレン・バフェットが30年以上保有するコカ・コーラ株(KO)は年初来+1.57%と好調を維持している。トランプ政権による関税政策が米国企業に打撃を与える中、コカ・コーラは米国内製造比率の高さとグローバル展開によって影響を最小限に抑えている。
さらに、景気後退局面でも需要が落ちにくい消費財というセクター特性や、63年連続の増配実績などが投資家からの支持を集める要因となっている。配当利回り2.8%とブランドの強固な競争優位性を備えた同社は、不確実性の高まる市場において「買って、永遠に保有すべき銘柄」として再評価されている。
トランプ政権の関税政策が生む産業格差とS&P500の沈下

2025年に入り、トランプ大統領が強硬な貿易政策を打ち出す中で、S&P500は年初から12%の下落を記録した。とりわけ中国への依存度が高い製造業を中心に打撃が顕著であり、関税の影響が産業全体に均等に及んでいない現実が浮き彫りとなっている。特に米国外で製造を行い、原材料の輸入に依存する企業ほどその影響は深刻であり、コスト高騰と収益圧迫が連鎖的に進行している。
このような環境下では、製造と供給の分散がどれだけリスクを軽減するかが明確になった。米国市場を主軸に置き、現地生産の比率が高い企業はコスト転嫁による影響を最小限に抑えることができ、経済の急ブレーキの中でも一定の耐性を見せている。S&P500の下落は、市場全体が一律に評価される時代が終わりつつあることを示唆している。
その一方で、関税がインフレと景気後退のリスクを同時に呼び込む「スタグフレーション」の火種となる懸念も根強い。市場はすでに資金の退避を始めており、今後は政策次第でさらなる資金流出が加速する可能性もある。米中対立の激化が金融市場の構造変化を促しつつある点は見逃せない。
ディフェンシブ銘柄の中核 コカ・コーラの防衛力
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの保有銘柄の中でも、コカ・コーラ(KO)は際立つ存在感を示している。ジェームズ・クインシーCEOの発言にも見られるように、同社は「グローバルでありながらローカル」を体現する企業であり、各国市場に応じた現地生産体制を確立している点が、関税リスクに対する最大の防波堤となっている。
さらに、同社の製品は日常消費の中核を成す飲料であり、経済後退時にも需要が急減しにくい特性を持つ。これは、消費財ETFの年初からのパフォーマンスがS&P500を上回っている事実にも裏付けられる。加えて、コカ・コーラは63年連続の配当増を達成しており、投資家にとっては信頼性の高いキャッシュフロー源として機能している。
中長期で見れば、インフレ環境下でもブランド力を武器に価格転嫁が可能であり、競争力を保ちやすい構造を有する。こうした特性が、バフェットの「永遠に保有すべき株」への確信を支えていると言えるだろう。市場が動揺する時ほど、その真価が試される銘柄である。
長期保有が生む価値とコカ・コーラ株の位置づけ
株式市場が短期の変動に翻弄される中で、コカ・コーラは長期保有に値する企業として再評価されている。直近の騰落率に一喜一憂するのではなく、持続可能なブランド力、多様な商品群、柔軟な財務体制といったファンダメンタルズに注目すべきである。とくに、水や低糖飲料、コーヒー、紅茶など健康志向に対応した製品ラインの充実は、時代に適応する姿勢を示している。
また、配当利回り2.8%、63年連続の増配という実績は、単なる収益性を超えた企業文化の表れである。この一貫性が、株主にとっての安定した収益源となり、下落局面でも株価を下支えする要因となってきた。短期的なリスクは残るが、コカ・コーラのように不況下でも存在感を発揮する企業は、分散ポートフォリオにおいても中核的な位置づけにある。
近年の市場は「成長か安定か」の二項対立から、「持続可能な安定成長」へと関心がシフトしている。その文脈で見たとき、コカ・コーラの長期投資としての価値はむしろ今後さらに高まる可能性を秘めていると言える。
Source:The Motley Fool