MicrosoftはWindows 10 バージョン22H2向けに、WSL2のGPUパラバーチャライゼーションの不具合を修正するKB5055612プレビュー更新を配信開始した。この修正により、大文字小文字の区別によってGPU機能が正しく動作しなかった問題が解消され、仮想環境でのグラフィックス処理が安定化する見込みである。

加えて、セキュリティ強化として、BYOVD攻撃を防ぐ脆弱ドライバのブロックリストが更新されたことも注目される。この更新はあくまでオプション扱いであり、手動でのインストールや事前設定の有無によって配信方法が異なる。正式配信前に新機能の動作確認を可能とする一方で、Citrix関連の更新失敗やイベントログ誤表示など既知の問題も残されている。

WSL2のGPUバグ修正がもたらす仮想環境の安定化

今回のKB5055612プレビュー更新により、Windows Subsystem for Linux 2(WSL2)で確認されていたGPUパラバーチャライゼーションに関する重大な不具合が修正された。この不具合は、GPUの仮想化においてパラメータの文字大小を厳密に区別する仕様が原因で、正常にGPU支援が動作しない事例を引き起こしていた。

Microsoftはこの点を調整し、WSL2環境でも安定してGPUアクセラレーションが機能するよう改善したと説明している。この修正は、Linuxベースの開発環境をWindows上で活用する技術者にとって、パフォーマンスと信頼性の両面で実用的な恩恵をもたらす。

この対応は、WSL2を利用したGPU計算や機械学習、3D描画といった分野の利用拡大に対するMicrosoftの継続的な支援の一環と見られる。

仮想環境におけるハードウェアアクセラレーションの完全性は、Windows上での開発ワークフローを強化する鍵であり、今回の修正によってその基盤整備が一段と進んだ形だ。ただし、このプレビュー更新は正式配信前のものであり、組織的な導入に際しては検証と監視を怠らない姿勢が求められる。

セキュリティ対策としての脆弱ドライバ遮断機能の強化

KB5055612では、GPUの仮想化問題に加えて、OS内部のセキュリティ層の更新も重要な要素となっている。特に注目すべきは、Windowsカーネルの脆弱ドライバブロックリスト(DriverSiPolicy.p7b)の改定である。

今回の更新では、「BYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)」攻撃に悪用される既知のドライバ群が新たにブロック対象として加えられた。これにより、攻撃者が正規署名されたが脆弱なドライバを持ち込むことで権限昇格やシステム制御を図る手法に対して、Windowsの防御力が一段と高められる見込みである。

このような取り組みは、昨今の高度化する攻撃手法に対抗するために不可欠であり、OSレベルでの防衛強化の方向性を明確に示している。

一方で、ブロック対象の拡張が一部の業務用アプリケーションやデバイスドライバに影響を及ぼす可能性も否定できないため、企業利用者は事前の互換性チェックが求められる。今後もMicrosoftは、セキュリティ重視の姿勢を維持しつつ、利便性との均衡を模索する対応が必要となるだろう。

Source:BleepingComputer