Microsoftは、Windows 11の新たなプレビュービルド「26120.3872」をBetaチャンネルで公開し、Copilot+ PC専用の高度な機能を複数追加した。今回の更新では、AIによる文脈アクション機能「Click to Do」の拡張や、読み書き障害支援の「没入型リーダー」機能、OneDrive内写真の自然言語検索機能などが導入されている。
これらの機能は現時点でSnapdragon搭載PCに限定される一方、将来的には他のCopilot+ PCにも段階的に展開される見通しである。また、全ユーザー対象として音声入力支援の「Voice Access」に単語登録機能が加わり、認識精度の向上が図られている。
AIとアクセシビリティの両面における進化が見られる一方で、機能提供におけるデバイス依存性が依然として残っており、今後の展開が注視される。
Click to DoとReading Coachの連携がもたらす学習支援機能の進化

新たなWindows 11 Betaビルド「26120.3872」では、Copilot+ PC向けに文脈依存型アクション機能「Click to Do」が強化され、無料アプリ「Reading Coach」との連携が実現した。
Reading Coachは2024年初頭より提供されている学習支援ツールで、発音や読み上げのトレーニングに特化している。今回の統合により、ユーザーは任意のテキストを使った発音練習をClick to Doのメニューから直接行えるようになり、教育分野におけるAI支援の新たな展開が見て取れる。
Microsoftはこれに加えて、「没入型リーダーで読む」機能もCopilot+ PCに実装した。ディスレクシアやディスグラフィアに配慮したこの読書モードでは、フォントや背景色の変更に加え、語彙の視覚補助機能「絵辞書」も提供される。これにより、視認性の向上と意味理解の促進が同時に図られる構造となっている。
これらの機能はすでにSnapdragon搭載のCopilot+ PCに展開されており、今後はより広範なCopilot+対応デバイスへの提供が予定されている。Microsoftがアクセシビリティの充実を図る姿勢は明確であり、その一方で高機能化が特定ハードウェアに依存している点は注意が必要である。
タスクバー検索のAI強化とOneDrive連携によるクラウド利便性の拡張
今回のアップデートでは、タスクバー検索ボックスがAIによって強化され、欧州経済領域に限定してCopilot+ PC上でOneDriveと連携した画像検索機能が提供された。
自然言語による検索が可能であり、「誕生日のケーキ」や「ハロウィンの衣装」などといった曖昧な表現でも目的の画像を効率よく特定できる。検索結果はローカルストレージとクラウド両方を横断して表示されるため、ユーザーのデータ探索効率は大きく向上する。
これはクラウドベースの情報整理を支援するAI技術の応用例として注目に値する。一方、対象がCopilot+ PCに限られていることから、実質的な恩恵を受けられるユーザーは現時点で限定的である。また、提供範囲が欧州経済領域にとどまっている点も、グローバル展開における規制やデータ保護方針の影響を示唆している。
Microsoftはこれまでも検索機能の拡張に取り組んできたが、今回のように視覚メディアに特化した機能強化はユーザーエクスペリエンスを飛躍的に高める可能性を秘めている。技術的進展と同時に、プライバシー保護と地域展開のバランスが今後の課題となるだろう。
Voice Accessの辞書機能追加と音声認識精度への影響
全ユーザーを対象とした機能改善として、Voice Accessにカスタム辞書登録機能が加わった。これにより、発話時に認識されにくい固有名詞や専門用語をユーザーが辞書に追加することで、音声入力の精度向上が期待される。辞書の追加は即時反映され、次回以降の使用時に反映されるため、特に業務用途においてタイピング負担を軽減する実用的な補完手段となる。
Microsoftは2021年に音声認識の先進企業であるNuanceを買収しており、本機能の導入はその技術資産の反映とみられる。ただし、Voice Accessへの本格的な辞書機能の実装がこのタイミングであることには、旧来の音声認識製品と比較して技術的な移行の遅れも見受けられる。
とはいえ、今回の機能拡張はWindows 11を利用するすべてのユーザーに開かれた改善策であり、今後の音声UI進化における基盤整備の一端を担うものといえる。ユーザーによる個別最適化が可能になったことで、AIと人間の対話環境はさらに洗練される方向へと進んでいる。
Source:TechRadar