Minisforumは「Japan IT Spring Week」において、Ryzen 9 9955HX「Fire Range」CPUを中核とする最新プラットフォームを公開した。発表されたのは、mATX仕様の「F1FGM」MoTDマザーボード、高性能IOを備えた「MS-A2 Mini PC」、そして最大12コア構成のRyzen AI 9 HX 370に対応するNAS「N5 PRO」の3機種である。特にF1FGMは、TDP最大160W対応・DDR5-8000対応など、デスクトップ向けとしては異例のスペックを誇る。
この一連の製品群は、既存のBD770i/790iやMS-A1の後継とされ、Zen 5アーキテクチャによる演算性能、USB4やWi-Fi 7といった次世代IOの充実が大きな特徴となっている。Minisforumが培ってきた小型筐体技術とハイエンド構成の融合により、BTO市場やエンタープライズ用途での採用も視野に入る展開とみられる。
Ryzen 9 9955HXとX870Mを核としたMoTDマザーボードF1FGMの構成と性能

Minisforumが発表した「F1FGM」マザーボードは、デスクトップ向けにモバイルCPUを採用するMoTD(Mobile on Desktop)戦略の最新形である。最大16コア32スレッドのRyzen 9 9955HXを搭載可能であり、Zen 5アーキテクチャの採用により、高い演算性能と電力効率を両立している。
TDPは標準で55Wながら最大160Wまで調整可能で、ベーパーチャンバーによる冷却機構と13フェーズVRM設計がそれを支える。DDR5 DIMMスロットは4基、最大8000MT/s・256GBまで対応し、mATX設計ながら拡張性に優れる。
X870Mチップセットを採用しつつ、B850に匹敵する帯域と機能を有する本製品は、PCIe 5.0 x16および4.0 x16スロット、Gen5x4対応のM.2スロットを含む豊富な拡張性を備える。USB4、5GbE LAN、Wi-Fi 7の搭載は、単なるマザーボードを超えた統合プラットフォームの可能性を示している。従来のBD770i/790iと比較しても、構造・冷却・IO面での進化が顕著であり、BTOベンダーやエンスージアスト層への浸透が期待される。
MS-A2 Mini PCがもたらすコンパクト筐体におけるIO最適化の方向性
Ryzen 9000HXシリーズを核とする「MS-A2 Mini PC」は、前世代「MS-A1」の後継として登場した。SO-DIMM形式のDDR5メモリを最大96GBまで搭載可能とし、最大5200MT/sに対応する仕様は、ノートPC用コンポーネントを活用しつつもデスクトップ用途への適合を強く意識した設計である。3基のM.2スロットに加え、U.2対応や10GbE SFP+ LAN、PCIe 4.0 x8スロットの存在が、ストレージやネットワーク性能への妥協を許さない姿勢を明示する。
USBポートは合計5基、映像出力にはHDMIとDPの両方を搭載し、Wi-Fi 6EおよびBluetooth 5.0も標準装備とすることで、オフィス用途から小規模サーバーユースにまで対応可能な柔軟性を示す。筐体のサイズは明らかにされていないものの、記載されたIO構成から判断すれば、単なる省スペースPCに留まらない性能重視のミニコンピューティングの提案と受け取るべきである。
N5 PRO NASが象徴するAI対応ストレージプラットフォームの進化
「N5 PRO NAS」は、最大でRyzen AI 9 HX 370までのCPUをサポートする構成が特徴であり、ストレージ装置の枠を超えた演算処理への対応力を備える。12コア24スレッドの処理能力に加え、Radeon 890Mの内蔵GPUによって、ローカルでの軽度なAI推論やマルチメディア処理にも適した構成が可能となっている。DDR5 SO-DIMMを最大48GBまで搭載可能であり、計3基のM.2スロットに加えて、最大22TB対応の3.5インチベイを5基搭載する設計は、大容量かつ高速アクセスに最適化されている。
ネットワーク面では10GbEおよび5GbEポートを備え、USB 3.2 Gen1を3基搭載。PCIe 4.0 x4スロットによる拡張も可能で、一般的なホームNASをはるかに上回る柔軟性と性能を内包している。Minisforumがこれまで手がけてきた小型デバイス技術をストレージ分野に拡張するこの動きは、AI時代におけるローカルデータ処理の需要拡大と密接に関係しているといえよう。
Source:Wccftech