Intelが2026年に投入予定の次世代CPU「Nova Lake」に、TSMCの最新2nmプロセスノードを採用する可能性が報じられた。TSMCの2nm技術はゲート・オール・アラウンド(GAA)構造を採用し、電力効率と性能の両立を実現する次世代半導体である。
Nova LakeはArrow Lakeの後継となり、デスクトップおよびハイエンドノートPC向けに展開される見通しで、ソケットには新型「LGA1954」が想定される。IntelはすでにTSMCの3nmを一部採用しており、2nm移行は自然な流れとも捉えられるが、自社開発の「18A」プロセスとの住み分けや戦略的棲み分けが焦点となる。
TSMCが量産体制を整える一方で、Intelは18Aで自社のGAA技術と裏面電源供給を先行投入し、性能と密度で優位性を狙う。Panther LakeやClearwater Forestなど18A世代の製品群も着々と準備が進んでおり、GAA技術を巡るIntelとTSMCの先端プロセス競争は、CPU開発とファウンドリ戦略の今後を左右する重要局面を迎えている。
TSMC製2nmプロセス採用の背景と技術的特徴

Intelが2026年に投入を計画する「Nova Lake」で、TSMCの2nmプロセスノードが採用される可能性が報じられている。TSMCの2nm技術は、従来のFinFETに代わりGAA(Gate-All-Around)トランジスタ構造を採用することで、電力漏れの大幅な低減と演算性能の向上を実現する。台湾・新竹の工場では試験生産が近く始まり、歩留まり改善の後、年後半には量産に入る見通しである。
このプロセス技術はAppleのiPhone 18 ProやAMDの一部チップにも採用される予定であり、Nova Lakeがこれらと並ぶ形で市場に投入されれば、Intel製CPUとしては初めてTSMC製GAA構造を取り入れた製品となる。TSMCとIntelの両社は現時点で公式なコメントを避けているが、Intelが先にCore Ultra 200「Arrow Lake」でTSMCの3nmプロセスをCompute Tileに使用した前例を踏まえれば、同様の戦略的分業は合理的な判断である。
本件が実現すれば、Intelは独自の製造技術である「18A」と外部の最先端技術を並行活用するハイブリッドな開発体制を本格化させることになる。これは、製造能力と技術投資の分散によるリスクヘッジ、ならびに競合他社に対する技術革新のスピード向上を狙ったものと捉えられる。
Nova Lakeのプラットフォーム刷新とソケットLGA1954の導入可能性
Tom’s Hardwareなど複数の情報筋によれば、Nova Lake世代では新しいCPUソケット「LGA1954」の採用が計画されている。このソケットは2,000本を超えるピン数を持つ可能性があり、電力供給や信号伝達の精度を格段に向上させる仕様が求められている。リーカーの「Olrak」が公開した資料には、LGA1954に言及したジグモデルや電圧レギュレータの試験装置の存在も確認されており、開発の具体的な段階にあることを示唆している。
高性能化が進む中でのソケット刷新は、物理的なインターフェース設計の見直しと同義であり、マザーボードや冷却機構の大幅な改変も伴う。この動きは、デスクトップやハイエンドノートPC市場における次世代製品の再定義につながるもので、エコシステム全体に与える影響は決して小さくない。
一方、Intelが進める「18A」プロセスの進展も並行しており、Nova LakeではTSMCとの協業技術と、自社開発技術との両立が図られる可能性がある。複数の先端プロセスを同時進行で投入する構想は、競合AMDとの差別化を意識したものと見られ、アーキテクチャ設計と製造プロセスの双方での柔軟な対応力が求められる。
Intelの18A戦略とPanther LakeおよびClearwater Forestの展開
Intelは自社製造プロセス「18A」の商用展開に向け、GAAトランジスタおよび裏面電源供給(BSPDN)を組み込んだ新アーキテクチャを準備中である。VLSI 2025シンポジウムの技術資料によれば、18AはIntel 3と比較してトランジスタ密度を30%以上高めるとされ、Panther LakeやClearwater Forestといった次世代プロセッサ群への適用が予定されている。
Panther Lakeは省電力ノートPC向けの「Core Ultra 200V」の後継として2025年後半に市場投入が計画されており、Clearwater Forestは2026年に登場予定のサーバー向けCPUとして位置付けられる。これにより、Intelは消費電力、性能、集積度の三点で競合に対抗しうる構造を固める。
一方で、TSMCが2027年の「A16」ノードで裏面電源供給技術を導入予定であることから、Intelの先行実装が実際の競争力として機能するかは今後の量産品質と市場導入のタイミングに左右される。TSMCの量産スケジュールと比較した場合、Intelの技術優位性が一過性のものに留まらないためには、製品化と供給網における一貫性が極めて重要となる。
Source:TechSpot