Appleの2025年第1四半期の米国iPhone販売において、最上位機種であるiPhone 16 Proが予想外の苦戦を強いられた。CIRPの最新データでは、Proモデルのシェアが前年の45%から38%に縮小し、特にiPhone 16 Pro単体では22%から17%への減少が際立つ。

一方で、基本モデルのiPhone 16は、前年の14%から20%へと大幅な成長を遂げ、iPhone 16eの導入を含めた価格訴求の強化が奏功した形だ。より高額なProモデルよりも、手頃で実用的な選択肢が消費者に支持された可能性がある。

この変化は、価格戦略やモデル間の差別化が市場選好に直結することを示唆しており、次期モデルiPhone 17シリーズの構成や販売戦略に影響を及ぼすと考えられる。

iPhone 16 Proの販売減は価格志向のシフトが要因か

CIRPが公表した2025年第1四半期のデータによれば、iPhone 16 Proの販売シェアは前年同期の22%から17%に落ち込み、ハイエンドモデルとしては異例の低調ぶりが際立った。同じく上位モデルのPro Maxを含めたシェアも、前年の45%から38%へと縮小しており、これまで強い支持を受けていたProシリーズの優位性に変化の兆しが見られる。

特筆すべきは、iPhone 16無印がシェアを14%から20%へと急伸させている点であり、同時期に発表されたiPhone 16eの導入が、より多くの消費者を価格の手頃なモデルへと引き寄せた可能性が高い。こうした傾向は、単なるモデル間の性能差ではなく、消費者の購買行動における価値観の変化を示していると考えられる。

特に物価上昇や為替変動の影響が生活に及ぶ中で、高価格帯モデルの優位性が相対的に揺らいでいる。AppleはProシリーズを技術革新の象徴として位置づけてきたが、そのアピールが購買動機として十分でなくなりつつある点は見過ごせない。次世代モデルの開発において、価格対価の説得力を再構築する必要がある。

基本モデルの成長が示すAppleの価格戦略の転換

iPhone 16無印とiPhone 16eは、CIRP調査においていずれも好調な販売を記録している。iPhone 16無印は前年比で6ポイント増加し、全体の20%を占めるに至った。特にiPhone 16eは、廉価モデルとして新たに導入された存在でありながら、価格感度の高いユーザー層を効率的に取り込んだことが読み取れる。

Appleは従来、プレミアムモデルを軸としたラインアップ戦略を展開していたが、ここに来て下位モデルの価値提案を強化し、エントリー層へのリーチを意図的に広げたことがうかがえる。この価格戦略の変化は、単なる製品仕様の変更ではなく、競合環境の変化にも対応した結果である可能性がある。

Android陣営が中価格帯において積極攻勢をかける中、Appleはこれまで手薄だったゾーンへの布石を打ったとも解釈できる。結果として、上位モデルへの一本化から、価格帯を横断した多層的戦略へと舵を切った印象だ。ただしこの方向性は、製品間のブランド境界を曖昧にするリスクもはらむため、明確な差別化軸を維持しながらのバランス設計が今後の焦点となる。

iPhone 17シリーズの展望とProラインの再定義の必要性

今回の販売結果は、次期モデルであるiPhone 17シリーズの製品構成と訴求方針に大きな示唆を与えるものといえる。CIRPの分析から読み取れるのは、Proモデルの価格と価値のバランスが消費者に十分に伝わっていないという現実である。

iPhone 17 Airの登場が予測される中で、AppleがどのようにしてProラインの再定義を図るのかが注目される。単なるスペック向上では限界が見えてきており、ソフトウェア体験やサービス連携といった、機能横断的な優位性の明確化が求められる局面にある。

また、iPhone 17シリーズでは、単価の高いモデルに過度に依存しない販売構成を意識する可能性も考えられる。端末単体での訴求力に加え、Apple Oneなどのサブスクリプションサービスとの統合的価値提供が鍵を握るだろう。

Proという冠に対し、単なる高性能ではなく「Apple体験の頂点」としての役割を再構築することが求められる。市場環境の変化と購買心理の微細なズレを、Appleがどの程度正確に捉えられるかが、iPhoneの次章を左右することになる。

Source:9to5Mac