過去1年で株価が約40%下落し、時価総額850億ドルに低迷するIntelは、NvidiaやAMDにシェアを奪われる中、2025年第1四半期決算と並ぶ重要イベントとして4月29日の「Foundry Day」に注目が集まる。同社はAI PCやデータセンター向け新技術に加え、外部顧客向けの半導体製造(IFS)に経営資源を集中させており、「18A」プロセスの進展が成長戦略の要となる。
新CEOリップ・ブー・タンの下で始動した構造改革は、Intelの長期収益性と米国半導体製造の国家的戦略にも直結しており、市場関係者は同イベントが今後の評価に与える影響を慎重に見極めている。
ファウンドリー戦略が示すIntelの構造転換の本質

Intelは、ファウンドリー事業を中核戦略として再構築を進めており、その象徴的なイベントが4月29日に予定される「Foundry Day」である。かつて自社製品向け製造に特化していた同社は、現在では外部顧客への製造請負にも注力している。
最新の「18A」プロセスはリスク生産段階に入り、これはIntelが世界の受託製造市場に本格的に参入するための技術的達成点と位置づけられる。加えて、非中核事業のスピンオフによる財務体質の強化も明言しており、リソースを集中的に半導体製造と技術革新に再配分する方針を示している。
これらの取り組みは単に企業収益の改善を目指すに留まらない。高度な製造技術を国内に持つ唯一の米国企業として、Intelの成功は地政学的・国家安全保障的観点からも極めて重要である。米中技術摩擦が激化する中、自国生産能力の強化は米政府にとって戦略的関心事項であり、Intelはその中核に位置する存在となりつつある。一方で、巨額の設備投資と成長期待とのバランスは依然として課題であり、市場はこの挑戦が利益創出へ確実につながるか慎重に見極めている。
PCとデータセンター向け新技術が収益回復の軸となるか
Intelが掲げる三本柱の戦略には、AI対応PC、次世代データセンター技術、AIイノベーションが含まれる。クライアント向けには、省電力性を備えた「Lunar Lake」や高性能を志向する「Arrow Lake」などの新型プロセッサが導入されており、加えて「vPro」技術による法人市場への訴求も強調された。
一方、データセンター分野では「Xeon 6」シリーズの性能向上と、「Gaudi 3」アクセラレータによるAI推論能力の強化を打ち出している。これらの技術は、競合他社と比較した際の差別化要因として位置付けられている。
ただし、現時点でIntelはデータセンター市場でのシェアを維持できておらず、NvidiaやAMDの先行を許している。性能改善が実績として市場に評価されるまでには時間がかかる可能性があり、短期的な業績への貢献には不透明感が残る。また、AI対応PC市場は依然として黎明期にあり、成長性は高いものの需要の安定には課題があると見られる。これらの技術投資が真に収益回復に結びつくかは、今後の製品普及とパートナーシップの進展次第であろう。
株価低迷の中でも浮上する長期的な評価見通し
Intelの株価は過去12ヶ月で約40%下落し、2025年通期の売上高成長見通しも前年比でわずか0.42%増にとどまる。短期的には調整後1株当たり利益が0.49ドルとされる一方、2029年には3.31ドルまでの増加が予測されている。フリーキャッシュフローも現在の赤字基調から、4年後には200億ドル近くの黒字転換が見込まれている。こうした将来的な成長見通しを支えるのがファウンドリー戦略と新技術群の成果である。
市場では依然として評価が分かれており、36人のアナリストのうち「強い買い」は1名に過ぎず、31名が「ホールド」、4名が「強い売り」と慎重な姿勢を維持している。しかし、平均目標株価は現在の水準から20%超の上昇余地を持ち、株価が過小評価されている可能性も指摘されている。大規模な資本支出と収益性改善のタイムラグをどのように評価するかが、今後の市場判断を大きく左右する要因となる。Intelの長期成長シナリオは、短期の不確実性とどのように均衡を取るかが鍵となる。
Source:Barchart.com