米商務省による先端半導体の対中輸出規制強化を受け、AMDは中国市場で最大8億ドルの損失を報告した。特にデータセンター向け「MI300」シリーズが影響を受け、2024年第4四半期の業績見通しに下押し圧力がかかっている。NvidiaやIntelも類似の懸念を抱えており、業界全体に波紋が広がっている。
一方、CEOのリサ・スー氏は、他地域での需要拡大が損失補填に寄与するとの見通しを示しており、全体としては成長軌道の維持を目指す構えを見せる。市場では、同社の戦略的成長分野であるAIやクラウドへの注力が今後の回復に貢献する可能性に注目が集まっている。
規制発表後も株価は約4.8%上昇しており、市場はすでに悪材料を織り込んだとの見方もある。ただし、アナリスト間では見解が割れており、投資判断は中国市場への依存度やリスク耐性をどう評価するかに左右されると見られる。
対中規制によるMI300シリーズの販売制限と業績への具体的影響

2024年第4四半期におけるAMDの業績は、米商務省による新たな輸出規制により深刻な影響を受けることが明らかとなった。特に先端AI半導体「MI300」シリーズの中国向け販売が厳格に制限されることにより、同社は最大8億ドル規模の損失を見込んでいる。この数字は一過性の影響にとどまらず、今後数四半期にわたる業績への圧迫要因として継続する可能性があるとされている。
MI300はデータセンターやAI処理に特化した製品であり、中国市場においても重要な需要を抱えていた。これにより、AMDが描いていた同シリーズによる成長シナリオの一角が崩れた形となる。加えて、同様の規制がNvidiaやIntelにも適用されていることから、米国製AIチップの対中輸出が構造的に困難となる状況が強まりつつある。
この事態を受けて、AMDの短期的な売上構成比には明確な変化が生じる。中国市場での収益が削減される一方で、北米や欧州など他地域での販売強化が急務となる。リサ・スーCEOのコメントにも見られるように、グローバル需要の底堅さに活路を見出す構えであるが、規模や成長スピードにおいて代替が完全であるとは限らない。よって、地域分散戦略の成否が今後の株価安定に与える影響は決して小さくない。
市場反応と投資家の評価 株価上昇の背景とその限界
AMDが8億ドルの潜在的損失を公表したにもかかわらず、株価は約4.79%上昇した。この値動きは、一見すると市場が規制による悪影響を既に織り込んでいたとの受け止めを反映しているように見える。一部の投資家は、リスク要因が明確化したことによる不確実性の後退を好感した可能性がある。また、AIやクラウドコンピューティングといった成長セクターへの継続的な投資姿勢も、今後の業績回復に対する期待を支えている。
一方で、この上昇は一時的な反発であるとの慎重な見方も存在する。輸出規制の持続性と、中国市場の代替が短期間で実現可能かどうかには不透明な要素が多く、投資家心理の転換が再度起こるリスクも否定できない。特に中国市場から得ていた収益比率が高い企業にとっては、同国依存の構造的見直しが避けられず、それに伴うコストや販売チャネルの再構築も含めた全体戦略の再検証が求められる局面にある。
アナリストの間でも意見は割れており、短期的なボラティリティを警戒すべきという声と、中長期の成長性を評価する声が併存している。最終的に、AMD株の是非を判断するには、投資家自身がリスク選好の度合いと、米中関係を巡る規制動向に対するシナリオ想定をどこまで緻密に行えるかにかかっている。
Source:Barchart