英国BarclaysがNvidiaに対する目標株価を155ドルに引き下げた。背景には、トランプ前政権の関税政策再燃を受けた米中貿易摩擦の激化、そして米国による高度半導体の輸出規制強化がある。特に、中国市場への依存度が高いNvidiaにとって、103億ドルに及ぶ同市場での売上が今後の業績に与える影響は小さくないと指摘されている。

さらに、Nvidiaは最新の規制によりH20チップ関連で最大55億ドルの損失を見込んでおり、これにより株価は52週高値から30%以上の下落を記録した。一方で、Barclaysはレーティングを「オーバーウェイト」に据え置き、ウォール街全体でもAI事業の成長性に対する長期的な期待は根強く、平均目標株価は依然として169ドルと高水準にある。

米中対立とH20規制がNvidiaの収益基盤に与える構造的圧力

Barclaysによる目標株価引き下げの直接的要因となったのは、米中間の貿易摩擦の再燃と、それに伴う半導体輸出規制の強化である。トランプ前政権の復帰を念頭に置いた政策動向により、中国は米国製品への報復関税を拡大しており、Nvidiaはこの影響を大きく受けると見なされている。

2024年における中国市場からの売上は103億1000万ドルに達し、同社全体の売上高の約17%を占める。これほどの比率は、政策リスクが経営計画に与えるダメージの大きさを如実に物語っている。

さらに、米国政府は高性能半導体の中国向け出荷を規制しており、特にH20チップに関連する制限が直撃した。Nvidiaはこの規制により、最大で55億ドルの四半期的損失が生じると見積もっている。これは単なる市場機会の逸失ではなく、研究開発投資やサプライチェーン全体の再構築を迫る可能性をはらむ。現行の収益モデルが対中依存に傾き過ぎていることは、企業体質の脆弱性として改めて認識されつつある。

AI分野への成長期待がNvidia株への強気評価を下支え

短期的には逆風が強まるものの、ウォール街におけるNvidia株への評価は依然として堅調である。Barclaysのトム・オマリー氏は目標株価を155ドルへ引き下げた一方、レーティングは「オーバーウェイト」に据え置いており、これは中長期的な収益拡大の余地を依然として信認していることを意味する。また、アナリストの間での平均目標株価は169ドルであり、現在の市場価格と比較しても65%の上昇余地が見込まれている状況である。

この背景にあるのが、AI関連半導体需要の中長期的拡大に対する期待である。MicrosoftやAmazonがAI投資を一時的に抑制しているとはいえ、生成AIや大規模言語モデルへの需要は今後も続くと考えられている。NvidiaのGPU技術はその中核を担っており、業界全体の構造変化において不可欠なポジションを占めている。ゆえに、一時的な下押し圧力を受けたとしても、投資家の間では成長ドライバーとしての信頼が揺らいでいないことが強気評価の根拠とされる。

Source:Barchart