著名投資家ビル・アックマン率いるパーシング・スクエア・キャピタルが、Hertz株を1271万株取得し、同社株式の約4.14%を保有する第3位の大株主となった。これを受け、同社株は直近5日間で2倍以上に急騰し、年初来上昇率は138%に達している。
一方で、Hertzの直近決算は厳しく、売上は前年比6.6%減の20億4000万ドル、調整後1株損失は1.18ドルと市場予想を大幅に下回った。経営再建後の成長戦略と投資家の期待が高まる一方で、不況懸念や需要減退のリスクが依然として市場に影を落としている。
アナリスト評価は依然として慎重で、「モデレート・セル」から「ストロング・セル」まで幅広く分かれる。現在の株価水準は平均目標株価を大きく上回っており、投資家の間には割高感も広がりつつある。
アックマンのHertz投資が呼び水に 破産企業が株価急騰を遂げた背景

Hertz株は2025年に入り年初来138%の急上昇を記録し、直近5日間で2倍以上の値上がりを示した。この背景には、著名投資家ビル・アックマンが率いるパーシング・スクエア・キャピタルが同社株を1271万株購入し、時価総額の4.14%を取得した事実がある。これにより同ファンドはHertzの第3位株主となり、市場に大きなインパクトを与えた。過去に破産申請を経て再上場した同社の復活ストーリーは、個人・機関投資家の注目を集めている。
ただし、Hertzの足元の業績は芳しくない。2024年第4四半期の純損失は4億7900万ドル、1株あたり損失は1.18ドルであり、アナリスト予想を大きく下回った。売上高も前年同期比6.6%減の20億4000万ドルで、営業利益率も依然としてマイナス圏にある。業績面での不確実性が続くなかでの株価上昇は、過熱感や過信によるリスクを孕む構造ともいえる。
アックマンによる投資は、その影響力の大きさから一種の市場指標として受け止められているが、企業の本質的な価値改善が伴っていない場合、将来的な修正局面を迎える可能性も否定できない。投資家の期待感と現実との乖離が拡大する局面では、市場の反応が急変するリスクを常に意識すべきである。
アナリスト評価は厳格 期待と実態の乖離が突きつける課題
現在、Hertzの株価は8ドルを超えて取引されており、アナリストの平均目標株価である3.24ドルを大きく上回っている。市場における評価のギャップは顕著であり、Hertzをカバーする10人のアナリストのうち、6人が「ホールド」、3人が「ストロング・セル」、1人が「モデレート・セル」という評価を下している。大多数が積極的な買いを推奨していない事実は、株価水準の妥当性に疑義を呈する材料となっている。
特に注目すべきは、同社の業績指標における乖離である。調整後EBITDAの損失は前年同期比で改善されたものの、依然として3億5700万ドルの赤字であり、市場予測(1億2150万ドルの損失)より悪化していた。このようなデータは、企業の収益構造に根本的な改革がなされていないことを示唆している。再建途上の企業に対し、過剰な期待が先行すれば、後の失望売りによる急落を招く危険性がある。
また、レンタカー業界は景気変動の影響を受けやすく、景気後退時には法人・個人双方の利用需要が縮小する可能性がある。アナリストの慎重な姿勢は、こうしたマクロ環境を織り込んだ上での判断であり、投資判断においてはセンチメントの一時的な高まりに惑わされず、冷静な分析が求められる局面にある。
Source:Barchart