Googleは5月20日開催の開発者会議「I/O 2025」に向けて、セッションリストを事前公開した。注目のトピックには、Androidの次世代UXデザイン「Material 3 Expressive」や、拡張現実体験の鍵を握る「Android XR」の新展開が含まれる。これらに加え、GeminiによるAI強化、デスクトップウィンドウ機能、スタイラス対応の拡充といった開発者支援施策も網羅されており、Androidの進化を実感できる構成となっている。

XR SDKのベータ版移行と2025年中の正式リリース予告も含まれ、未来のスマート体験への期待が高まる中、今年のI/Oは特に意味深い内容となる可能性がある。

Android XRの進化とベータ移行が示す拡張現実の転換点

Google I/O 2025では、Android XRが正式リリースに向けて大きく前進する。現在提供されているDeveloper Previewは、イベント期間中にベータ版へと移行し、年内には正式な提供が開始される見込みだ。この進展は、開発者だけでなく、今後登場するスマートグラスやARデバイスを見据えるユーザーにとっても重要な意味を持つ。TED 2025で披露されたGemini搭載のAndroid XR対応スマートグラスのデモは、記憶機能による生活支援を示しており、現実とAIの融合がどこまで実用段階に近づいているかを印象付けた。

XR体験は、単なる視覚的な拡張にとどまらず、インタラクションの変革を含意している。Android XRは、スマートフォンの延長線上ではなく、次なるプラットフォームとして設計されており、Googleはこの領域に本格的に注力していることがうかがえる。一方で、SDKのベータ移行という段階はあくまで開発の中間地点であり、製品化のプロセスには課題も残る可能性がある。正式版までの期間に、ユーザー体験の質がどこまで高められるかが今後の鍵となるだろう。

新UX「Material 3 Expressive」が提案する感情を動かすデザイン

Androidの次世代UXとして導入される「Material 3 Expressive」は、視覚的な刷新を超えた「感情的なデザイン」を志向する。GoogleはこのUIフレームワークにおいて、色彩やアニメーション、レイアウトに感性を投影し、ユーザーの心の動きと直結するようなインターフェース設計を試みている。I/O 2025のセッションでは、デザインファイルとともにアルファコードが公開され、開発者はこの新UIに対応するアプリ制作を早期に開始できるようになる。

Material Designの進化は、単なる美的追求ではなく、操作性や視認性といった実用面の改善と連動してきた。「Expressive」という名称には、情報と感情の境界を曖昧にすることで、より直感的なデジタル体験を実現する意図が込められていると考えられる。ただし、こうした表現的UIは、デバイス性能や開発者側の適応力に依存する面もあるため、普及の速度は一律とはならないだろう。とはいえ、UIが心理的影響まで意識される時代の到来を象徴する取り組みであることは間違いない。

Source:Android Central