データ解析企業パランティア・テクノロジーズは、2021年に約5,070万ドル(当時の為替で約55億円)分の金地金を購入したが、2023年に約4000万円の利益で全量を売却した。その後、金価格は急騰し、2025年4月には1オンスあたり3,506ドルに達した。もし保有を継続していれば、当初の投資額は約99億円の利益に化けていた計算となる。
当時、同社は金やビットコインによる決済受け入れなどを通じて「ブラックスワン的未来」への備えを語っていたが、その後の動きはやや一貫性を欠く印象も否めない。一方、2024年の売上は前年比29%増、株価は12ヶ月で365%上昇しており、結果的に金よりも自社の成長に賭けた選択と見なせる面もある。
パランティアが手放した金、現在の価値は99億円超に

2021年、パランティア・テクノロジーズはインフレヘッジの一環として約5,070万ドル相当の金地金を購入した。この非伝統的な投資判断は、当時ビットコインを決済手段に加えるなど多様な通貨への対応を進めていた同社の「未来に備える姿勢」を象徴するものだった。しかし2023年、同社は全ての金を約4000万円のわずかな利益で売却。結果として、2025年4月時点の金価格3,506ドルを基準にすれば、保有を続けていれば99億円超の評価益を得られた計算となる。
金価格はこの2年間で急騰しており、2021年当時と比較するとほぼ2倍に達している。安全資産としての金への需要が世界経済の不確実性とともに拡大した影響と見られる。一方で、パランティアは金からの撤退後も力強い業績成長を続け、2024年には売上が前年比29%増を記録し、株価も前年比365%上昇した。結果論ではあるが、同社は金よりも自社の事業拡大への再投資を優先した形となる。
伝統資産からの撤退、企業成長に寄与したのか
金売却の判断が機会損失であったことは金額的には明らかだが、パランティアの経営戦略全体を俯瞰すれば、一概に失敗とは言い切れない。同社は2023年以降、政府機関との大型契約を相次いで獲得し、最近では米移民税関執行局(ICE)と3,000万ドル規模の契約を締結している。AI主導の分析プラットフォームの需要が高まる中、同社の収益源は急速に拡大している。
CEOアレックス・カープは、逆風の中でも信念を貫く姿勢が現在の成功につながったと語っており、金のような外部資産ではなく、ソフトウェア事業の深化に集中するという選択が奏功したとも解釈できる。特にAIや国家安全保障分野での需要を捉えた製品展開は、目先の利益よりも長期的な価値創出を意識した判断と読み取れる。金を売却せず保有を続けていた場合のシナリオは想像に難くないが、現実には金よりも高い成長率を達成している点に注目すべきである。
Source:msn