GPUクラウドの新興企業CoreWeave(CRWV)が、2027年までに収益を8倍に伸ばす可能性があるとの強気な予測がアナリストから示されている。JefferiesとStifelは、同社株に対し「買い」評価を下し、それぞれ51ドルおよび55ドルの目標株価を提示した。現在の株価は41ドル前後で推移している。
Microsoft、Meta、OpenAIなどを顧客に持つ同社は、Nvidia製GPUの優先的調達や独自のKubernetes機能を武器に、AI向けインフラ領域で存在感を高めている。2024年には収益が前年比で737%増の19億ドルに達し、AI転換の成果が顕著である。一方で、資本支出の急拡大と顧客集中リスク、さらに負債の膨張という構造的課題も抱えている。
将来的な利益成長が実現すれば、現在の水準から大幅な株価上昇が見込まれる可能性もあるが、それはあくまで多数の前提が成立した場合に限られる。持続的競争力と財務安定性の両立が、今後の投資判断の鍵となる。
生成AIインフラの中核を担うCoreWeaveの構造的優位性

CoreWeaveは、生成AI需要の爆発的な増加に応える専門クラウドプラットフォームを展開している。同社はNvidia製GPUの優先確保権を背景に、ベアメタルKubernetes対応のインフラを提供し、AIワークロードに最適化された環境を構築している。
さらに、独自開発のミドルウェアにより、高密度なデータセンター運用を実現しており、競合他社に対して高い参入障壁を形成している。こうした優位性により、MicrosoftやMeta、OpenAIといった先進的な大手顧客の獲得に成功している。
2024年の収益は前年比737%増の19億ドルに達し、同社の転換戦略が機能していることを裏付けている。Stifelによれば、契約済みの需要は平均4〜4.5年持続する構造であり、中長期的な収益見通しも堅調とされる。一方、CoreWeaveは2017年に暗号通貨マイニング企業として創業し、Ethereumのバリデーション変更を受けてAI分野に転身した経緯がある。この迅速な方向転換と技術資産の再活用は、事業モデルの柔軟性と実行力を象徴している。
他社との競争が激化するAIクラウド市場において、CoreWeaveの戦略は差別化が明確である。ただし、技術優位が持続可能であるためには、顧客との関係性維持とインフラ投資の効率化が今後の鍵となる。市場の成長と共に、同社の競争優位が持続するかどうかは慎重に見極める必要がある。
楽観的評価と並行する資本構造の脆弱性
アナリストによる強気な評価が示されている一方で、CoreWeaveの財務的側面には看過できない課題が存在する。Stifelは同社が資本集約型のビジネスモデルであることを指摘し、現在約80億ドルの純負債が2027年までに300億ドルを超える可能性に言及している。
特にデータセンターの急速な拡張には大規模な設備投資が必要であり、資金調達手段が成長の継続性に直結する。2024年には8億6340万ドルの純損失を計上しており、前年から45%の悪化という点も重く受け止める必要がある。
収益の大半がMicrosoft1社に依存している点もリスクである。2024年の売上の62%が同社によるものであり、顧客集中リスクが事業の安定性を脅かす可能性がある。また、GPUの償却期間などの会計処理の仮定もキャッシュフロー見通しに影響しうる点は無視できない。インフラビジネスである以上、コスト構造と固定資産の管理は投資判断の重要な要素である。
競争優位性が認識されている現状ではあるが、負債膨張と損失拡大は、成長が減速した際に致命的なリスクとなり得る。評価の高さが正当化され続けるためには、財務面の安定化と収益構造の分散が不可欠である。市場が描く楽観的なシナリオは、あくまで財務的持続性の裏付けがあってこそ成立する。
Source:Barchart